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7月豪雨の被災状況調査 POLITEC 、長崎・熊本で マイクリップに追加

HPPE管の特性を把握

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  • 変位を測定(佐世保市)
  • 60mにわたって宙吊りとなったが給水は継続(山江村)
  • 球磨川の沖鶴橋

 配水用ポリエチレンパイプシステム協会(POLITEC)は12月10、11日の両日、長崎県佐世保市・小川内町地区および熊本県山江村・万江地区、球磨村・沖鶴橋周辺の3カ所を訪れ、九州地区における令和2年7月豪雨被害の現地調査を行った。各地の被災状況と今回の調査状況をまとめた。

 【佐世保市】佐世保市では、7月6~7日にかけての総降雨量が413mmに達し、8日には県道・市道にクラック等が発生。小川内町地区ではクラックが水道管から直線距離で200~150mほど離れた位置であったことから、9日に地元説明会を行い住民の自主避難を開始した。

 10日8時頃、幅110m×長さ210mにわたって大規模な地すべりが発生。2時間半後には配水池の水位低下を知らせる警報(遠方監視装置)が作動。配水池の流量計のログは当初、3㎥/時程度の漏水のため影響は小さかったが、地すべりにより埋設されていた呼び径50の水道配水用ポリエチレン(以下、HPPE)管が破断したと見られ、流量は15㎥/時へと増大していた。

 3時間後には被災した管路方面への仕切弁を閉栓。断水は13世帯に及んだが、幸い人家への被害はなかった。28日~8月1日にかけて一時帰宅が開始されたため、断水エリアへの仮設工事を実施。φ40mm×41mを県道東側の配水管φ40mmより分岐、仮設した。10月1日に警戒区域は解除されたが、被災管路が埋設されていた道路の復旧見込みは12月現在、立っていない。

 POLITECはその後、幅180m×長さ500mに拡大した大規模な地すべり地域で破断したHPPE管について破損状況の調査を行った。被災したHPPE管はほぼ直角に屈曲しており、EF接合部はソケット表面が露出していたが、破断するまでは機能を堅持していたとみられる。これを手掘りにより破断部まで掘り出し、管路変位のスケール測定とともに被災品の回収を行った。回収された管は屈曲挙動や耐久性などについて詳細な調査および試験が行われる。

 同市上下水道局水道整備課・坂口主査は「(現場は)小規模な給水人口だったが、遠方監視装置で被害状況を逐次把握していたことが早期対応につながった。今後とも強靱な水道システムの構築に努めたい」としている。

 【山江村】7月4日未明から熊本県南部を中心に局地的に非常に激しい雨が降り、芦北町付近では3時20分に約110mmの猛烈な雨を観測し、記録的短時間大雨情報を発表した。その後も天草市や芦北町、人吉市、あさぎり町、球磨村、八代市周辺などで1時間に約110~120mm以上の猛烈な雨を観測。1時間降水量では天草市牛深など2地点で98.0mm、同12時間では水俣市で415.0mmを含む9地点、同48時間では多良木町で418.5mmを記録した。

 内陸部に位置する山江村は3~4日にかけて総雨量468.5mmを観測。万江地区では村内を流れる万江川が氾濫。豪雨により川に沿った道路部分が洗掘され、呼び径100のHPPE管が宙吊りのまま露出した。なお、住民約70人は県道が流失したこともあり被害の前に避難していたとみられる。

 調査では、約60mにわたり宙吊りの状態になっているHPPE管の管路変位をスタッフやスケールなどで測定。さらに上空と対岸からドローンによる動画および静止画撮影を行った。

 山江村建設水道課上下水道係の前村主事は「今回の災害でHPPE管の伸縮性がよく分かった。道路が損壊しても給水そのものが継続されていたことは大きい」と給水が継続できたことに胸を撫で下ろした。同村では、令和3年度中に道路復旧工事に合わせて呼び径100×63.1mのHPPE管の布設を行う予定。

 【球磨村】熊本県球磨村は、7月4日未明からの球磨川の氾濫で甚大な被害を受けた。同村では主に球磨川の南部地区で取水し、住民の多い北部地区に配水する系統となっているが、球磨川の氾濫により橋梁添架管が2カ所被災し、村内の広域で断水が続いた。

 市街地を有する渡地区に配水する沖鶴橋では、橋の流出に伴い150mmの橋梁添架管(PWA規格のHPPE管)が流出。現在はWEETA口径100mmで仮設配管を設置している。現地では橋台の側面から流出したとみられるHPPE管が引き出され防護されており、POLITECでは状況をつぶさに視察した。


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