布設替に更生工法採用 静岡県企業局、コスト縮減に手応え マイクリップに追加
静岡県企業局の静清工業用水道事業・袖師線配水管布設替工事に、対象区間の起終点に立坑を建設し、既設管の内面に耐震性のある更生材を形成する自立管更生工法「チューブテックス工法」が初採用された。8月13、14日に無事施工を終えた。
静岡県企業局は七つの工業用水道事業と三つの水道用水供給事業を持つが、近年は人口減や大口ユーザーの使用廃止などが経営を圧迫していた。静清工業用水道では、平成23年度から老朽管路の布設替えに着手するとともに、平成28年度には全事業でマスタープランを策定したが、同プランを推進しても今後60年間の更新費用が4542億円と莫大な金額になることが分かった。このため、老朽管路を撤去なしで更新しコストダウンを図る工夫として新設管と併用する二重化、延命化して有効活用するなど、さまざまな管路整備手法に着手。その中で今回、静清工業用水道の一部区間に「チューブテックス工法」を採用することとした。
静清工業用水道は戦前の昭和16年に給水を開始した最も古い歴史を持つ工業用水道。対象となる埋設管は昭和28年に布設された口径600mm×50mの鋼管で老朽化が進み、漏水事故も発生していた。さらに施工現場は交通量の多い静岡市道に面しており、埋設物が輻輳して長期間の開削による工事が困難だった。当初は他工法も検討されたが、一時的な断水が可能であったこと、コスト面での優位性などから同工法の導入に踏み切った。
チューブテックス工法は、欧州で古くから実績のあるRTi社が開発した反転更生技術。欧州では水道約50km/年、ガス管10km/年などの実績を持つ。日本ではRTIジャパンパイプソリューションズが中心となり、管清工業、フソウ、アクアインテックと連携して施工・販売を行っている。更生材のエポキシ樹脂は水道施設に定める安全基準をクリアするとともに、高い耐震性能も併せ持つ。
工事は8月のお盆休み期間に実施され、管洗浄から樹脂含浸した更生材の挿入・拡径工、加熱養生などを経て無事終了。推進工法と比較して2300万円(60%減)のコスト縮減とともに、約1カ月の工期短縮を実現した。企業局では今回の工事結果も参考にして、今後は独自の「管路の整備・再構築マニュアル」の策定に着手するとともに、新たな管路整備手法を取り入れ、さらなるコスト縮減を目指していく方針。
【青山直司水道企画課長の話】 さまざまな条件からこの工法を選択した。当局では、マスタープランからさらに1000億円の費用削減を目指している。この工法が有効であったので、1000億円が期待値から確実値へ近づいたと言える。所管管路は740km余りにも及ぶが、今後も最新の技術を取り入れながら職員の英知を結集し、コスト削減策に取り組んでいく。
【山内保典同課工業用水班長の話】 経済比較からの優位性と、断水工事が可能なお盆休み期間でユーザーへの影響が最も少ないという点から新しい工法に踏み切った。工事では既設管の老朽化などにより洗浄に時間がかかったが、地元の協力と調整の結果とともに工期内で終わったことを評価したい。