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上田長野地域広域化へ、歴史的歩み 首長らが一堂に視察 マイクリップに追加

  • 犀川浄水場での3市1町首長、公営企業管理者ら
  • 四ツ屋浄水場における紫外線処理設備の説明
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 上田長野地域の加藤久雄長野市長、土屋陽一上田市長、小川修一千曲市長、山村弘坂城町長、小林透長野県公営企業管理者らが17日、将来の水道の広域化等を見据え、同地域の水道施設を視察し、意見交換を行った。

 今回の視察は、現在広域化等の検討を進めている「上田長野地域広域化研究会」における活動の一環。5月に厚生労働省が公表した同地域をモデルとする「水道基盤強化計画策定に向けた水道施設の最適配置計画の検討業務一式報告書」で示された、50年後の施設の最適配置(案)で継続利用を想定する4浄水場について、3市1町の首長自ら訪れた。

 上田長野地域広域化研究会は、長野県企業局と3市1町(長野市、上田市、千曲市、坂城町)で構成し、現在は広域化・広域連携等に向けて検討を進めている。検討の軸となっているのは、厚労省が同地域をモデルケースに検討した水道施設の最適配置(案)で、広域化による事業費の削減効果のほか、施設管理の効率化、将来の余剰能力を活用した他事業体との連携の可能性などが示されていた。

 今回視察したのは、最適配置(案)において今後の継続利用を想定する浄水場として位置付けられた染屋浄水場(上田市)、諏訪形浄水場(企業局)、四ツ屋浄水場(企業局)、犀川浄水場(長野市)の4施設。このうち千曲川上流に位置する染屋浄水場と諏訪形浄水場は、施設を最大限活用することで、他の浄水場を廃止することが可能になるとの予測が立てられていた。4施設を継続利用かつダウンサイジング等を行うことで、水需要の将来的な減少に伴う浄水場稼働率低下の改善や経年化が進む施設の建設投資額の減少、給水原価上昇の抑制等が見込まれる。

 視察後の意見交換では、冒頭、長野市の上平敏久上下水道事業管理者があいさつ。開催の経緯として、研究会で関係する首長にまずは最適配置(案)において継続利用を想定する4浄水場を視察して理解を深めてもらいたいという考えがまとまり、関係者の尽力があって実現に至ったという。上平管理者は「関係する首長の方々が一堂に会して互いの施設を視察する初めての機会だった。広域化の検討に当たって、歴史的な出来事になったのではないか」と語気を強めた。

 3市1町の首長が視察の所感等をそれぞれ述べた後、研究会の事務局やWeb参加の「水道事業広域化・広域連携に係る基礎資料作成業務」を受託したNJSがこれまでの検討状況などについて説明した。研究会の座長を務める小林管理者は「ある程度スピード感を持って進めていくことが必要だが、中身を詰めて住民・議会等の理解を得るという面も意識しながら進めていければ」と呼びかけた。

 これらの説明を受けて再度各首長が意見等を交わした。中でも加藤市長は県が末端給水事業を担っていることに触れ、「これまで県にリーダーシップを発揮してもらってきたので、県が主導して良い形で進めていってほしい。大きな事業であるので、これを機に長期的なスパンで生活に不可欠な水道を安定的に安全に供給していける体制を作っていければ」と期待した。

 【加藤市長の話】 各職員の方に説明してもらって、大きな転換点に来ていると実感した。国の力も借りつつ、この歴史的瞬間がしっかりとものになっていくようお願いしたい

 【土屋市長の話】 先人の努力があって今もおいしい水をいただけていることをありがたく感じる。今後も市民の方に情報提供をしつつ、どのように進めるか考える必要はあるが、施設更新など課題もあるのでしっかりやっていかなければと思う」

 【小川市長の話】 浄水場それぞれに個性や特色を感じた。地域全体の住民理解を得やすい形態で進めていく中で、丁寧に広域での事業を構築しつつ、スピードアップもしながら皆さまと連携していきたい」

 【山村町長の話】 これまで水道を運営されてきた方々に敬意を表したいと思う。施設課題はさまざまなので、その応分の負担は全体で考えていくべき。50年の計画と言っても、スタートからしっかりとした形で歩み出せるような結論を出してもらいたい」

 ◇

 3市1町は、7月上旬に同地域における広域化・広域連携の取組みへの支援や、国に対する予算確保への働きかけなどを県に対して要望していた。これを受けて、7月末に県企業局と研究会を設立。8月末に第2回会合を開き、他形態も視野に入れながら事業統合を軸に検討を進める方針を示した。今後は10月頃に予定する第3回会合で中間取りまとめを示し、3月をめどに方向性の報告(案)を取りまとめる方針。


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