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2021年1125日 (木) 版

更新・再構築に着目 JWRC「AquaーMODELS」発足、推進委で方針議論 マイクリップに追加

発足式での記念撮影

 19日に発足した水道技術研究センター(JWRC)の「AquaーMODELS」では、水道事業の基盤強化やカーボンニュートラルといった大きな動きを踏まえ、約3年間にわたり「維持修繕・更新」「浄水場再構築」の二つのテーマで研究を進めていく。

 同日の浄水技術研究推進委員会では、事務局が示した研究内容案について学識者委員がコメントしたほか、事務局が研究の背景・目的、体制やスケジュールの見通しなどを説明した。

 AquaーMODELSは、MAC21(1991~93年)から数えて10代目の浄水分野の共同研究プロジェクトとなる。愛称はAquaーModernly Optimally Designed, Efficient and Leading System(最新・最適に設計された効率的・先端的システム)の頭文字に由来する。

 プロジェクトの正式名称は「水道の基盤強化に資する浄水システムの更新・再構築に関する研究」で、維持修繕・更新や浄水場再構築を適切に行うための情報収集と方策提案に取り組むことで、水道施設を良好に保ち、水道システムとしてのレベルアップを目指す。テーマ設定に当たっては、施設老朽化とともに、基盤強化のための広域連携の推進や適切な資産管理、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた施設の更新・集約再編が背景となった。

 研究体制としては、従来は研究推進委員会の下に作業を担う複数の研究委員会を置いていたが、今回は研究委員会を一つとし、その下に二つの小委員会を置く。研究推進委員会の委員長は前プロジェクトに続き東京大学大学院の滝沢智教授が、研究委員会の委員長は京都大学大学院の伊藤禎彦教授、副委員長は芝浦工業大学の伊藤雅喜工学部非常勤講師が務める。参加企業は別掲の通り。

 第1小委員会(委員長=大瀧雅寛・お茶の水女子大学大学院教授)は維持修繕・更新に関する研究を担当する。19日の事務局提案では、老朽化などに起因する事故を未然に防ぐための適切な更新を推進するため、Aqua10(2008~11年)で開発した「浄水場施設更新シミュレータ」の更新・機能追加が研究内容案として挙がった。このシミュレータは、施設の現状・アセットマネジメント情報・シナリオなどの必要項目を入力することで、50年間の経年変化を考慮しつつ各シナリオにかかる費用を試算するもの。

 浄水場再構築に関する研究を担当する第2小委員会(委員長=山村寛・中央大学教授)については、事業体が再構築後の浄水システムを考えるきっかけ作りを目的に、その選定方法の検討が研究内容案として示された。また、その際にはeーWater2.(2005~07年)で作成した「水質に応じた浄水システムの選定手法」が参考になるとした。この手法は、原水レベルや目標とする浄水レベルをもとに、水質面で最適な浄水システムを複数提示し、合わせてコスト・スペース・LCAに関する情報を提供するものとなっている。

 ◇   ◇

 これらの研究内容案は、先立って開かれた第1回研究委員会でも議論された。委員からは「いずれにしても事業体のニーズや実態を調査する必要がある」との声が多く上がったという。

 19日の研究推進委員会では、それぞれの学識者委員が見解を述べ、需要変動や継続的なダウンサイジング、広域連携・官民連携の多様化、デジタル技術の進展、過去に実施したシミュレーションの精度などへの考慮の必要性を指摘した。滝沢委員長は「研究にとどまらず、事業体の維持修繕・更新につながるような成果にしていかなければならない」などとし、今後参画する事業体委員の活躍に期待を述べた。

 また、オブザーバーとなる予定の厚労省、全国上下水道コンサルタント協会、日本水道運営管理協会も参加。厚労省からは名倉良雄水道課長が出席した。今後は研究委員会・各小委員会で具体の研究内容を固めていく。

 【参加企業】《第1小委員会》石垣メンテナンス▽オルガノ▽JFEエンジニアリング▽水道機工▽水ingエンジニアリング▽第一テクノ▽東芝インフラシステムズ▽西原環境▽日立製作所▽日立プラントサービス▽フソウ▽明電舎

 《第2小委員会》クボタ▽JFEエンジニアリング▽神鋼環境ソリューション▽月島機械▽東芝インフラシステムズ▽日立製作所▽前澤工業▽明電舎▽メタウォーター▽理水化学


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