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片山浄水所 施設を一新 吹田市、セラ膜処理で通水開始 マイクリップに追加

左から後藤市長、前田管理者、石川議長

 吹田市水道部が平成28年から進めていた片山浄水所更新工事が完了し、12月1日に通水を開始、同22日に新施設完成・通水式典が開かれた。

 更新工事では、従前の水処理施設の老朽化が進んで能力が低下していたことなどを踏まえ、処理方式を槽浸漬方式のセラミック膜ろ過へと抜本的に変更。浄水処理棟と排水処理棟を新設したことで取水から浄水・排水処理までを自己完結する施設となり、災害時でも安定的に給水できる体制を構築した。

場内排水処理も可能に

 従来の施設は昭和28年に浄水処理を開始し、それから68年が経過していた。原水は地下水で、これまでは前処理ろ過と高速ろ過を組み合わせた処理方式を取っていた。

 セラミック膜による新たな処理では、膜を収納容器に納めず、膜の集積体をそのまま槽に浸漬し、水位差やポンプ圧でろ過を行う。処理方式の選定においては、狭隘な敷地内に配置できるほか、処理の安定性、運転管理の容易さ、従来の施設を停止させずに更新できることなどから総合的に判断した。

 浄水処理棟に加え排水処理棟も新設したことで、これまでは下水処理場に委託していた排水処理を膜濃縮・脱水設備で行えるようになった。これにより原水の取水から浄水・排水処理、汚泥搬出までを行える自己完結型の処理施設となった。

 また、資源の有効活用を図ることも可能とした。膜濃縮設備で排水をさらにろ過して濃縮汚泥と返送水に分離し、濃縮汚泥は加圧脱水後、固形の脱水ケーキとして搬出。返送水は再度浄水処理工程に戻し再処理することで、くみ上げた地下水の99.5%を活用できるという。

 吹田市水道は片山浄水所のほか、泉浄水所の配水、大阪広域水道企業団からの受水などで給水量を賄っている。今回の更新では片山浄水所の給水能力を1万2750㎥/日としたが、泉浄水所の段階的な機能停止を見据え、将来的には1万7000㎥/日に増強する方針。

 設計・工事監理はNJS大阪総合事務所が務めた。施工はクボタ、大日本土木西日本支社、エーユー、関根工務店、日新電機関西支社、関根水道工業所、摂津電気工業、愛知時計電機大阪支店らが担当した。

 12月22日の式典では、開催に当たり前田聡水道事業管理者があいさつ。工事関係者らに謝意を示した上で、新施設を「50年先を見据えて新たに生まれ変わった片山浄水所は、強靱化と危機管理の象徴的施設」などと紹介し、「地域に根差した水道事業を推進していくとともに、長期的かつ広範な視点で吹田水道の未来を描きながら、事業を次世代に引き継いでいきたい」と今後を見据えた。

 さらに後藤圭二市長があいさつし、水道部所属時の自らの経験を交えながら新たな水処理方式の実装経緯などを説明。浄水所のリニューアルや職員育成など先を見据えた取組みを進めていることに触れ、「将来を考えた吹田市のポリシーを踏まえて施設を見てもらい、何か感じてもらえれば幸いだ」などとした。

 来賓には石川勝吹田市議会議長、熊谷和哉水資源機構理事、里野善徳片山地区連合自治会会長らが参列し、祝辞を述べた。このほか工事関係者らへの感謝状贈呈や通水式などが行われた後、実際に施設を見学した。


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