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統合効果669億円と試算 上田長野地域、広域化基礎資料を報告 マイクリップに追加

 長野県企業局と3市1町(長野市、上田市、千曲市、坂城町)は3月29日、長野県庁で第4回上田長野地域水道事業広域化研究会(座長=小林透長野県公営企業管理者・当時)を開催した。

 会合において報告された「水道事業広域化・広域連携にかかる基礎資料」では、事業統合による効果として、令和52年度までに4事業(企業局、長野市、上田市、千曲市)合わせて669億円の供給単価上昇を抑制できることが明らかになった。今後は5月頃に再度会合を開いた後、議会・住民らへの説明を実施していく。

 議事では「水道事業広域化・広域連携にかかる基礎資料作成業務」の委託を受けていたNJSが基礎資料について報告。基礎資料は昨年8月頃から研究会の幹事会を計28回開催し、NJSとともに取りまとめたもの。作成に当たっては、厚生労働省が昨年公表した「水道基盤強化計画策定に向けた水道施設の最適配置計画の検討業務」の結果をもとにした。同地域を広域化することによって、事業費の削減、施設管理の効率化等の効果をより多く得られることなどが示された。

 基礎資料には主に広域化・広域連携方法の検討、効果の試算などが盛り込まれた。広域化・広域連携方法では、事業統合、用水供給事業の新設、個別経営などを比較し、事業統合を軸に進めることが最も大きな効果を得られるとして事業統合による財政シミュレーションを行った。事業統合のメリットには施設の最適配置による効率化や施設整備などへの計画的な集中投資のほか、国による交付金措置の活用、一つの経営判断に基づく迅速な意思決定が可能になることなどを挙げた。

 効果試算では、事業統合と現状維持の個別経営を比較。シミュレーションの条件として、給水収益、維持管理費、建設改良費などについては共通で試算した。また、統合時には広域化事業に関する国庫補助金等を活用することとし、その対象期間が令和16年度までの最大10年間とされているため、事業開始年度を7年度に設定した。施設整備費は52年度までの更新需要を踏まえて算出。管路更新率に関しては2年度の4事業平均0.62%から統合後は0.8%に引き上げる。

 これらの条件を踏まえて試算した結果、個別経営と比較して供給単価は4事業すべてで下回るとともに、合計で669億円の供給単価上昇を抑制できることが示された。推計人口から計算すると、一人当たりの抑制効果は平均で年間3006円になるという。

 主な要因には国庫補助金の活用のほか、組織効率化による経費削減、事業規模の拡大によって料金収益規模が増大し経営が安定することを挙げた。さらに広域化・広域連携の効果として、施設間の連携により主要浄水場停止時のバックアップ体制の構築が可能となる。また個別経営では、全事業で料金改定が必要になる一方、統合後は国庫補助金の活用などによって19年度まで料金統一の必要はないとしている。

 留意事項としては、国庫補助金等の時限制度があるため事業を早期に開始する必要があるほか、利用者目線の検討をさらに深めていくことなどが挙がった。今後は基礎資料をもとに、住民・議会等への説明を行っていく予定。

 また3年度で小林座長が異動となるため、事務局は4年度から企業局長に就く須藤俊一氏の座長就任を提案し、了承された。最後に小林座長は謝意を示した上で、昨年7月の研究会発足から4回の会合、計28回幹事会が開催されたことに触れ「水道事業を担う事業者としての危機感が広域化の検討へのエネルギーになったのだと思う。皆で力を合わせてという熱意を感じた。ぜひこの成果を来年度以降も、団結して取り組んでもらうようお願いしたい。丁寧な説明と、スピード感を持って前に進めてもらえれば」と期待を込めた。


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