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公営企業のあり方学ぶ UITec・OWGS前田・遠藤両氏が講演 マイクリップに追加

 都市技術センター(UITec)と大阪水道総合サービス(OWGS)は7月7日、第4回公営企業セミナー「上下水道事業の明日を考えるー官の役割、民の立場」をハイブリッド形式で開催し、公営企業に長らく携わった斯界の識者2氏が「公営企業の自立と自律」に関した講演を行った。約140人が参加した。

 1人目の講師は日本大学客員教授・元東京都下水道局長の前田正博氏。「官の役割、民の立場から見る今後の地方公営企業~東京の下水道事業を例に」と題して講演した。

 前田氏は、下水道事業は公共事業と公営企業の双方の側面があるが、目的は生活環境改善や浸水防除、水環境保全と公共性が高く、電気・ガス事業と比較すると税制や資金調達等でアドバンテージがあることからも、本質は公共事業だとした。また、公営企業は知事部局と比較すると予算の柔軟な原案策定と機動的・弾力的な運用が可能であり、創意工夫の余地が大きい一方で大きな責任が伴い、企業債の利息等から経営感覚も強く持つことを特徴として挙げた。

 また、東京都下水道局・芝浦水再生センターの上部利用事業を例に挙げ、「地方公営企業は独立性と責任が伴う大変面白い仕事。その仕組みをよく分かっていないと面白さを発揮できない事業でもある」と話した。

 2人目の講師は北海道大学大学院公共政策学研究センター研究員・元福島県三春町企業局長の遠藤誠作氏。「公営企業会計の戦略的活用」と題し、総務省の経営アドバイザーとして全国の事業体の経営状況を見てきた中での気付きも紹介した。

 かつて三春町では、唯一の浄水場がダム建設により水没することとなり、新たに高度浄水処理の浄水場を建設することになった。当時は小規模水道の手本がなく、一から自分で調べ、現場をよく調査して課題の解決に努めたという。

 また、事業のコスト管理のために企業会計への移行(法適用)を推進し、平成11年に簡易水道、12年に下水道、13年に宅造事業を全部適用とした。遠藤氏はポイントとして、企業会計において資産台帳を整備することで減価償却費をコストとして認識できること、一般会計繰入金を収益とすると実態が見えにくくなることなどを挙げた。

 主催団体のあいさつでは、UITecの永井文博理事長が「このセミナーは、大阪市から試行的に受託していた下水道施設の維持管理業務をクリアウォーターOSAKAに分割した平成29年度にスタートした。当センターの広範な業務のあり方を整理する中、各自治体から公営企業会計移行について知りたいという声を数多く伺ったことがきっかけ」と創設の経緯を紹介し、「今後も健全経営の支援等をテーマにセミナーを開催していきたい」とした。

 OWGSの尾原正史代表取締役は、「上下水道事業においては規模の大小を問わず、収入減少や施設の老朽化対策、人材不足といった課題に直面している。講演いただいた公営企業のあり方や公営企業会計の適用といった視点を課題解決の糸口にしていただければ幸い」とセミナーの成果に期待を寄せた。


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