室蘭市のベンゼン基準超過 低密度PE二層管で マイクリップに追加
室蘭市の水道水から水質基準値を超えるベンゼン等が確認された事故について、配水用ポリエチレンパイプシステム協会(POLITEC)が見解を示した。基準値の超過は、ガソリンスタンドから土壌にガソリンが漏洩し、そこに含まれるベンゼンが水道管に浸透したことが原因とみられている。POLITECによると、ベンゼンの浸透が発生したのは公道下に埋設されたφ50mmの配水小管で、管種は低密度ポリエチレン製の1種二層管。高性能高密度ポリエチレン(HPPE/PE100)を材料とする水道配水用ポリエチレン管とは異なる。
また、高密度ポリエチレンは分子構造上、低密度ポリエチレンと比べて溶剤が浸透・透過しにくいとしている。同協会が把握している範囲では、水道配水用ポリエチレン管の発売以来、灯油・ガソリン等の溶剤浸透に関する苦情などは会員メーカーを含めて1件も受けたことがないという。
事故対応の経緯と概要
ベンゼンの基準値超過は、室蘭市の高砂町1丁目25番地で発生した。市の発表によると、今年6月に「水道水から油の臭いがする」との問い合わせを受けて訪問した住民宅で異臭を確認。7月8日に25番地内のガソリンスタンド(GS)前で試掘を行ったところ、水道管周りの土壌に油成分が認められた。同日中にはバルブを新設して配水ルートを切り替え、油成分を含む土壌を通る管からの配水を遮断した。なお、掘削地点は管網末端の分岐の下流側に当たり、この地点からの配水区域は25番地のみとなる。
このGSはENEOSグループの特約店・北海道エネルギーによって運営されている。ENEOSによると、同社と北海道エネルギーは7月11日にGSから試掘結果の報告を受け、直ちに地下タンクと埋設配管の自主検査を行った。その結果、同日にレギュラーガソリンの配管で、14日に別の配管でも異常が見つかった。GSは15日、室蘭市消防局からの指導連絡を受けて営業を停止した。
市は7月26日、バルブによって遮断されている掘削地点付近の滞留水を採取し、分析機関に水質基準51項目の水質検査を依頼。その結果、基準値の0.01mg/ℓを超える0.02mg/ℓのベンゼンと油の臭気が確認された。
さらに約1カ月後の8月23日には、ベンゼンをはじめガソリンに含まれる計4項目の検査のため、同じ地点で滞留水の採水を実施。結果、3検体の最大濃度としてベンゼン7.6mg/ℓ、トルエン(水質管理目標設定項目、目標値0.4mg/ℓ)31mg/ℓ、メチル―t―ブチルエーテル(同、目標値0.02mg/ℓ)0.17mg/ℓ、キシレン(要検討項目、目標値0.4mg/ℓ)5.6mg/ℓが検出された。
一方でルート切替後の水道水の安全性を確認するため、8月9日と12日には、25番地および隣接する12番地の蛇口や歩道など計12カ所で水質基準等の検査を実施。いずれも基準値に適合していることを確認した。
また、9月27日と29日には、25番地に隣接する五つの番地の蛇口20カ所で、ガソリンに含まれる4項目と臭気の検査を実施。全ての箇所で基準値・目標値に適合していることを確認した。
9月6日にはENEOSと北海道エネルギーが土壌汚染調査の結果を公表。GSの敷地内7カ所で調査を行ったところ、土壌汚染対策法に基づくベンゼンの基準値に対し、土壌溶出量基準については6カ所、地下水基準については7カ所全てで超過が認められたとした。基準値はいずれも0.01mg/ℓだが、土壌溶出量では最大0.64mg/ℓ、地下水では最大5.1mg/ℓを測定したという。
両社は9月16日、水道水に混入したベンゼンについて「GSから土壌に漏洩したガソリンに含まれるベンゼンがポリエチレン製水道管を透過し、水道水に混入したものと判断した」と発表。GSにおいては消防法に基づく日常点検の一部(検知管検査)の実施に不備があったことを明らかにし、今後は敷地外の土壌調査や浄化措置を行っていくとの方針を示した。
市は9月末から10月にかけて住民を対象とした健康影響調査を実施。外部有識者で構成する委員会を設置し、影響の把握・評価を進めている。