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半導体工場 水確保へ全力 千歳市内のラピダス製造拠点 マイクリップに追加

2023/09/21 産業 企業

迫る27年の量産開始

候補地の位置関係(懇話会資料から作成)

 先端半導体の国産化を目指すラピダス(本社=東京・千代田区)が千歳市内で整備している工場の稼働に向けて、用水確保のための検討が急ピッチで進められている。

 4年後の量産ライン稼働時には1日に数万㎥単位の水量が必要になる見通しで、北海道は取水・送水などに係る調査業務を委託するとともに、これと連携する有識者懇話会を8月に設置。今月7日の懇話会第2回会合では、候補となる水源を「千歳川」「苫小牧地区工業用水道(北海道企業局)」の2案に絞り込んだとした。

 ラピダスの製造拠点「IIM」(イーム)は、新千歳空港近くの工業団地「千歳美々(びび)ワールド」の敷地内に建設される。2025年4月ごろにパイロットライン、27年に量産ラインの稼働を開始する予定。パイロットラインに関しては千歳市の上水道から必要水量を確保する。

 量産後は日量数万㎥の水が必要とされ、同市の水道水源ではこれを賄いきれない。そこで新たな水源の確保に向けて、北海道は「取水可能性調査事業」を行うこととし、日水コンを代表者とする3社コンソーシアム(構成員=NJS、ドーコン)に業務委託した。

 この業務では、まず水源候補地を、次に取水方式や送水ルートを、その後に概算事業費やスケジュールなどの事業実施方針を検討する。このうち水源候補地の選定については、決定プロセス等に対する意見を専門家から聴取するべく、有識者懇話会を設置した。座長は北海道大学大学院経済学研究院の平本健太教授、事務局は北海道経済部。

 7日の会合では、事務局が水源候補地を当初の8カ所から2カ所まで絞り込んだことを説明。前回会合での構成員の意見を踏まえつつ、自然環境保全や取水可能性の観点から、調整・調査などに長時間を要する候補地を除外したという。

 残った2案のうち、千歳川は河川流量に余裕がなく、水源の新設や振替には多くの関係者との調整が必要だとした。道企業局の苫小牧地区工業用水道については、安平川から取水する第二施設を水源候補地として想定。ユーザーなどとの協議は必要だが、未売水量の一部を活用することで工業用水を供給できる可能性があるとした。

 また、2案に対する評価方法案として▽環境影響▽協議・調整▽事業費▽工期――の4項目を示し、意見を求めた。構成員からは考慮すべき視点として「将来的な一層の需要増」と「レジリエンス」が挙がった。

 10月上旬までに開く次回会合では、事務局が水源候補地2案の評価結果案を示し、妥当性について意見を聞く予定。

ラピダスを巡る動き

 ラピダスは昨年8月、世界最先端の半導体の量産を目指し、国内主要企業8社(キオクシア▽ソニーグループ▽ソフトバンク▽デンソー▽トヨタ自動車▽NEC▽NTT▽三菱UFJ銀行)から総額73億円の出資を受けて設立された。北海道知事のトップセールスなどを経て、今年2月には千歳市内での工場建設を決定。6月から造成工事に着手し、今月1日に建築工事の起工式を開いた。

 誘致を先導した北海道は4月、経済部産業振興局内に「次世代半導体戦略室」を設置。国や千歳市、関係する自治体・組織、経済界などとの連携体制を構築し、情報の共有や発信を担っている。

 一方で政府は、工場整備を含めたラピダスの事業を「次世代半導体の研究開発プロジェクト」の一つに位置付け、経済産業省の予算から財政支援を行っている。支援上限は昨年度が700億円、今年度が2600億円。


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