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世界の水の持続へ 東京都 水道・下水道国際イベント、27都市と初の円卓会議 マイクリップに追加

今後一層の連携強化で合意

 日本水道協会全国会議の会期(18~20日)中、開催地である東京都の水道局・下水道局の主催で「水道・下水道国際イベント2023」が開かれた。18日には海外7大陸27都市の上下水道事業体と初の円卓会議を開催し、課題や主要な取組みを共有した。各都市参加者による東京水道展の視察や出展企業とのビジネスマッチング、国内関係者向けの事例発表なども行われた。翌19日には国内企業なども交えた意見交換会(ユニークベニュー)を開き、都市間の交流を深めるとともに、スタートアップ技術の紹介や来年4~5月に開催するイベント「SusHi Tech Tokyo」をPRした。

 18日に東京ビッグサイトで開かれた円卓会議のテーマは「持続可能な水の未来に向けて」。東京都水道局からは松田信夫技監、鈴木美奈子企画調整担当部長、上野直樹国際施策推進担当課長が、下水道局からは佐々木健局長、松井裕企画担当部長、小川則之企画調整課長が、政策連携団体である東京水道株式会社からは櫻井信治水道事業部長、岡田明大国際事業課長、東京都下水道サービス株式会社の柳雄国際事業支援室長、武見敏靖国際事業支援室事務局担当課長が参加した。

 開会に当たり松田技監があいさつ。事業を取り巻く諸課題に対し、今回イベントでの情報共有がともに解決に取り組んでいく契機となることを望んだ。

 東京都の水道事業・下水道事業については、規模や政策連携団体を交えた体制、特徴的な技術を上野課長が紹介した。水道の技術に関しては高度浄水処理と耐震化、漏水防止技術を、下水道に関してはSPR工法と水面制御装置、エネルギー自立型焼却炉を取り上げ、これらを通じて諸課題を解決してきたとアピール。「東京都は世界の水の問題解決に寄与できる」との信念を発信した。

 続いて海外の各都市から、事業体制やサービス人口・水準、直面している課題、先進的な取組みなどのショートスピーチがあった。水需要の急速な拡大に伴う需給ギャップから、施設の老朽化対応と強靱化施策、洪水や干ばつなど気候変動の影響、エネルギーと水の効率的な利用やマイクロプラスチック対策などの環境対策、さらにはデジタル化まで多様な話題が上がった。

 その後の意見交換で松田技監は、気候変動リスクを重く捉え、「環境に負荷をかけない新たな手法を迅速に取り入れることが重要だ」と指摘。各都市や民間の持つ技術とノウハウを共有・活用することが相互の事業の向上に寄与すると期待を込めた。各都市も今回の会議開催の意義とともに、連携・協働への発展を模索していく価値は大きいとの考えを述べた。

 これを受け、継続的な情報共有などさらなる連携強化に取り組んでいくことを鈴木部長が提案し、各都市の賛同をもって協同宣言とした。佐々木局長は「今後の連携に賛同を得られ、将来に向けて大変有意義な会議となった。各都市間の連携を一層深め、世界の水事業の改善につながっていくことを期待する」と述べ、会議を結んだ。

 海外からの参加都市は次の通り。

▽アーメダバード、デリー(インド)▽アンマン(ヨルダン)▽アムステルダム(オランダ)▽バンコク(タイ)▽ブリスベン(オーストラリア)▽ブリュッセル(ベルギー)▽ダッカ(バングラデシュ)▽ドーハ(カタール)▽ドバイ(アラブ首長国連邦)▽高雄、台北(台湾)▽カトマンズ(ネパール)▽キガリ(ルワンダ)▽クアラルンプール(マレーシア)▽ロサンゼルス(アメリカ)▽ミラノ、ローマ(イタリア)▽ナイロビ(ケニア)▽ニース(フランス)▽ラバト(モロッコ)▽リオデジャネイロ、サンパウロ(ブラジル)▽サン・サルバドル(エルサルバドル)▽ソウル特別市(韓国)▽シンガポール(シンガポール)▽ウランバートル(モンゴル)

官民が活発に交流 意見交換会、スタートアップ交え

日本企業とのマッチングが図られた

 19日には円卓会議に参加した海外27都市の事業体等との意見交換会が神田明神文化交流館(東京・千代田区)で開かれた。〝ユニークベニュー〟と称される日本の歴史文化が体験できるイベントスペースをフィールドに、立食形式によるカジュアルな雰囲気の中で、東京都の水道・下水道の知見や海外での課題解決の経験を共有した。日本企業とのビジネスマッチングも展開された。

 東京都からは黒沼靖副知事、西山智之水道局長、佐々木健下水道局長らが参加。開会のあいさつに立った佐々木下水道局長は、円卓会議等に参加した海外都市に感謝を示すとともに、職員間の交流の深化に期待を示した。

 日本企業からはクボタ、NJS、大成機工、メタウォーター、アズビル金門、石垣、積水化学工業、ヴェオリア・ジェネッツ、東京水道、東京都下水道サービスのほかスタートアップ企業6社が参加し、プレゼンテーションを行った。

 参加企業を代表してあいさつに立ったクボタの北尾裕一社長は、災害を教訓に研鑽を図ってきた日本企業の技術力、都市特性を背景にした近年の気候変動・脱炭素・DX技術への対応動向などを同社の耐震管技術等を事例に紹介し、「世界の問題解決に貢献するため、日本の企業は意見交換を楽しみにしている」と活発な交流を望んだ。

 約3時間にわたるマッチングの後、閉会あいさつに立った西山水道局長は「都市と都市の関係性を強化し、水問題の解決に努めていきたい」と意気込みを示し、〝三本締め〟で幕を閉じた。

TWと4都市が事業概況を発表 無収水対策を紹介

 18日午後には、海外4都市と東京水道株式会社(TW)が東京ビッグサイトで事例発表を行い、国内関係者らが聴講に訪れた。

 同社の富岡透氏は、東京都水道局とのグループ体制によって安定供給が果たされているとした上で、実際の水道システムと照らし合わせながらTWが担う業務などを概説。海外事業に生かしている技術・ノウハウとしてTSリークチェッカーを用いた無収水対策をPRした。

 また、TWが事業を展開しているカトマンズ市、高雄市、台北市、キガリ市が水道事業の概況や課題認識について発表。聴講者を交えながら意見を交わした。


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