日本水道新聞 電子版

2024年325日 (月) 版 PDF版で読む 別の日付を表示
2024年325日 (月) 版 別の日付を表示 PDF版で読む

事業課題の解決を展望 POLITEC講演会、幅広く6題の講演 マイクリップに追加

2024/03/25 産業 業界団体

 配水用ポリエチレンパイプシステム協会(POLITEC)は2月22日、都内で第11回講演会を開催した。水道事業の現状や課題解決などに関する6件の講演が行われた。

 厚生労働省水道課の中井隆課長補佐は「水道事業の基盤強化」について講演。法定耐用年数を超えた管路の割合が2割を超える一方で耐震適合率は約4割にとどまっていること、多くの水道事業者が小規模であり経営基盤が脆弱である一方で約半数の事業者で給水原価が供給単価を下回る原価割れ状態にあることを紹介し、その解決のために基盤強化が必要であることを強調。水道法で定める台帳作成・保管、施設の維持・修繕等の順守をあらためて求めた。

 総務省公営企業経営室の関口美波水道・工業用水道事業係長は「水道事業の現状と課題」と題し講演。水道管路耐震化事業に係る地方財政措置は、耐震化事業に継続して取り組んできた事業体は過去の平均事業費が上昇して上積事業費が生じづらくなることを踏まえ、同事業費の算出の基礎に管路更新率を採用し、かつ「全国平均管路更新率」または「当該団体の実績管路更新率」のいずれか低い方にて算出する方法に変更し、地財措置を令和6年度から5年間延長したことを紹介した。8年度以降は、前年度末時点で経営戦略を改定していることが要件となる。

 堺市上下水道局経営企画室の高瀬翔太氏は「堺市上下水道事業経営戦略2023―2030の策定」と題し講演。同戦略では管路更新に関し、目標耐用年数を超えない範囲で事業量を平準化。計画期間内では、基幹管路を年1.5%、配水支管を年1.0%更新する計画。配水池から重要給水施設(196カ所)に至る給水ルートの耐震化を優先して進めている。

 同局水道部水道建設課の山田健太郎主幹は「配水用ポリエチレン管の採用と概算数量設計による発注」について講演。同市では現在、配水支管を直営で設計しているが、年々、積算内容が複雑になり、かつ工事費用も増加傾向などの課題があった。これに対し、配水用ポリエチレン管および概算数量設計の採用を検討した。φ50mmの材料についても、耐震化の公平性確保の観点にてポリエチレン二層管から配水用ポリエチレン管に変更。概算数量設計は、配水用ポリエチレン管の継手種類がほぼ同一であり図面での省略が可能、曲管も比較的安価、生曲げ可能等の特長を生かせるとして、今後検証を進めていくという。

 同協会の塩浜裕一技術委員長は「水道配水用ポリエチレン管の最新動向に関する報告」と題し講演。能登半島地震において、配水用ポリエチレン管は石川県以外の震度6弱~5強を記録した11事業体(布設延長約1387km)での被害調査の結果、被害はなく、石川県内の6弱以上を記録した7事業体においてもこれまでのところ被害が報告されていないことを紹介した。

 まもなく発刊される「水道配水用ポリエチレン管の耐震設計の手引き」改定版では、レベル2地震動に常時荷重等を含めたより厳しい設計条件でも許容ひずみの3%を超える可能性が極めて低いことが明らかになり、レベル2地震動においても許容ひずみを3%にしたこと、地盤変状に対する新たな設計法も提案していること等を述べた。

 全国簡易水道協議会相談役・北海道大学公共政策学研究センター研究員の眞柄泰基氏は「水道事業の持続のために」と題し講演。持続性ある事業運営のためには、施設整備費を増加させ、水道サービスを向上させ、使用者の料金支払い意思を高揚させ、有収率を向上させ、投資可能額を増やし、地域経済を活性化させるという良い循環が求められるとした。また、人材確保のためには、社会的・経済的に評価され、技術力も評価されるという働きがいがある仕事である必要性を述べた。使用者の料金支払い意思を持続させるため、監査・評価システムの導入等、使用者の意思が反映される体制整備が不可欠とした。

 冒頭、土和広会長は「3日前、ある事業体の能登半島地震での応援活動の話を伺ったが、食料や睡眠の確保も難しいと聞き、あらためて頭が下がる思いだ。当協会としても、仮設配管資材の提供、管路被害の調査等で貢献していきたい」とあいさつした。


この記事を見た人はこんな記事も見ています

産業の過去記事一覧

×
ようこそ、ゲストさん。
新規会員登録 ログイン 日本水道新聞 電子版について