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「AquaーTANK」報告書をHPで公開 JWRC、当面の設計方針等示す マイクリップに追加

矩形ステンレスタンクの解析モデル例

 水道技術研究センター(JWRC)は1日、「矩形地上水槽(鋼製)の耐震設計に関する研究(Aqua―TANKプロジェクト)」(委員長=宮島昌克金沢大学名誉教授)の報告書を同センターのHPで公表した。地震時の矩形ステンレスタンクの動的挙動は未解明な点が多く、また令和4年に改訂された日本水道協会の「水道施設耐震工法指針・解説」でも矩形ステンレスタンクの耐震設計方法は明記されていない。

 このような状況を踏まえ、同センターでは自主研究事業として同プロジェクトを発足させ、鋼製矩形地上水槽の動的解析手法の解明を目的にした研究を進めてきた。

 プロジェクトの期間中(令和5年6月~6年9月)には能登半島地震が発生し、矩形ステンレスタンクに被害が多く出たことを踏まえ、現地被害調査を実施するとともに被害原因についても議論した。

 報告書では、研究の背景と目的、過去の被害事例、過去に被害があった矩形ステンレスタンクをもとに作成した解析モデルに対する地震波を与えた時刻歴応答解析結果と考察、これらを踏まえた当面の設計方針と耐震対策等を網羅している。

 また、矩形ステンレスタンクの被害の原因と考えられる「スロッシング」(内容水の固有振動数と地震動の振動数の共振によるもの。やや長周期領域の課題。波高や動水圧の大きさによっては側壁上部や天井の損傷を招く要因となる)、「バルジング」(側板と内容水の連成振動によるもの。短周期領域の課題。動水圧が衝撃力となり側板に繰り返し作用することで、側板の隅角部、側板の中央から下部の損傷を招く要因となる)の二つの振動現象についても紹介している。

 うち、5章の「矩形ステンレスタンクの当面の設計方針」では、プロジェクトでの検討結果等を踏まえ、耐震設計法等の標準化に向けた方針や留意点、課題を示している。

 具体的には、設計レベル2地震動は周期特性が異なる波形を2波形以上選定すること、小規模施設であっても動的解析を適用すべきであること、解析モデルはFEMを基本として各構造部材は非線形モデルとすること、バルジング・スロッシングの影響は流体要素により表現すること――等を挙げている。

 プロジェクトの委員は宮島委員長のほか、中央大学の平野廣和教授、鳥取大学の小野祐輔教授、岐阜工業高等学校の渡邉尚彦准教授、仙台市水道局、神戸市水道局、熊本市上下水道局、NJS、日水コン。オブザーバーは日本水道協会、日本水道鋼管協会、日本ステンレスタンク工業会。


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