〝Aqua―BridgeⅡ〟が発足 JWRC、データ保管や修繕手法等も検討 マイクリップに追加
水道技術研究センター(JWRC)は12月23日、都内で「水道施設の新たな点検手法等に関する研究」の第2期プロジェクトとなる「Aqua―BridgeⅡ」(委員長=長岡裕東京都市大学教授)の発足式を開催。プロジェクトに参画する9企業およびオブザーバー3者が出席した。水管橋をはじめとする水道施設のドローン等による点検データの保管方法のあり方や、修繕方法の例示、点検事例集の作成、診断AI開発の支援等について、今後の2年強の研究期間で取りまとめる。
第1期の「Aqua―Bridge」は、主に水管橋におけるドローン技術の活用を対象とし、その有効性と課題を確認するために全国12橋で実証実験を実施した。
その結果、ドローンの活用は、目視点検とほぼ同等のアングルからの撮影が可能であること、歩廊等からの不可視箇所の撮影が可能であること、水管橋全体の状態を定性的に把握するスクリーニング調査に有用であること、健全部を含めた経年劣化を把握するためのデータ取得に有用であること――を確認した。
一方、省令改正で義務付けられた5年に1回以上の定期点検を踏まえると、画像(動画または静止画)のデータ容量は膨大であり、取得したデータの保管方法に工夫が必要であることが主な課題とされた。
また、第1期プロジェクトに参画した水道事業体からは、点検成果物のまとめ方の標準的な指針や、水管橋の修繕方法を検討するための事例集、災害等の発生時の臨時点検におけるドローンの活用法、配水池等のドローン調査法、AIを用いた画像自動判別技術を用いた水管橋の異常箇所判定法――に対する要望の声が挙がっていた。
国が令和5年3月に改訂版を表した「水道施設の点検を含む維持・修繕の実施に関するガイドライン」が示す「水管橋点検に関するフロー図」において、第1期の研究範囲は「基本調査」に当たる。また、昨年5月に日本水道鋼管協会(WSP)が協会規格「WSP 082―2024」として制定した「水管橋点検・評価マニュアル」が表す範囲は、同フロー図では「基本調査」と「診断」に当たる。
これらの既往研究・検討を踏まえ、第2期の研究範囲は、同フロー図における調査・診断の後段となる「点検記録・保管」「修繕」「修繕記録・保管」に設定された。
成果目標として、「①点検データの有効な保管方法をまとめた事例集の作成及び水管橋の修繕方法の例示」「②水道施設(水管橋以外も含めた)の点検に関する事例集の作成」の2本を掲げた。
①では、アセットマネジメントに活用できる点検帳票の保管方法を整理して適切な点検サイクルへつなげるとともに、水管橋の腐食状況に応じた修繕方法を整理して修繕方法の手法決定の参考となる資料を作成する。
②では、水道施設(水管橋以外も含めた)のドローン点検の有効性を確認する。第1期に参画した事業体からの「水管橋以外の浄水施設・配水池等についてのドローンによる点検事例が見たい」「診断者による判定誤差・腐食の見落としが不安」「人員が限られる中で効率的な点検が可能なAIの開発を」との意見に応えるもの。
第2期の参画企業は、NJS、管総研、コスモ工機、三信建材工業、大成機工、デック、東京水道、日水コン、ミライト・ワンの9社。オブザーバーには、国土交通省、日本水道協会のほか、今期からWSPが参加する。
研究期間は、昨年12月から令和8年度までの2年強。全体会議は年3回の開催を予定。企業WGを月1回程度開催し、必要に応じて事業体との合同WGも開催する。
新技術および他分野で実績のある技術の水道分野への適用の確認のため、フィールドで実証実験を数回行う。
令和7年度中に中間報告会を開催し、令和8年度末に成果普及のための報告会を開催する予定。
今年度中は、実証実験の開催を1回予定するほか、AI開発に必要な教師データの元となる写真条件を整理する。
事業体委員は現在選定中で、10事業体程度の参加を予定している。
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安藤茂理事長の話
令和4~5年度に実施した前期プロジェクトの成果は報告書にまとめ、現在、当センターのホームページにて公開している。
前期プロジェクトでは、ドローン点検の有効性が確認された一方で、保管データが大容量になるといった課題が見つかった。水管橋以外の水道施設においても新たな点検手法の開発が期待される中、今期は、さらに実りある成果が得られるように皆さまとともに取り組んでいきたい。
長岡委員長の話
前期のプロジェクトの報告書を見た方から、非常に良いとの評価を多くいただいている。特に、中小規模の事業体にとって使いやすいことに配慮したことが良かったかと思う。前期プロジェクトの成果を基礎として、その上に新たな成果を打ち立てて、研究成果の一層の普及に努めたい。
国土交通省水道事業課・中井隆課長補佐の話
コンクリート構造物に加え、令和6年から水管橋等の定期点検が義務化されており、事業体にとって大変参考になる取組みということで国としても期待している。成果も広く周知されるように、国としても後押ししていきたい。
日本水道協会・島野敏寛技術専門監の話
前期プロジェクトの成果は使いやすいものになっていると思っており、今期についてもプロの委員の皆さまがお集まりであるので、事業体にとってさらに使いやすい実務重視の成果が挙がることに期待している。
WSP・庵崎高志設計・施工委員会委員の話
紹介があった当協会の「水管橋点検・評価マニュアル」も、今後、より充実させていくことを計画している。本プロジェクトとWSPとでそれぞれが良い成果を上げて、事業体の皆さまの水管橋の点検・維持管理への支援につながればと思っている。