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みやぎ型 優先交渉権者、メタウォーターグループに 事業費1563億円 マイクリップに追加

増田委員長(左)から答申を受ける村井知事

上工下水一体、事業期間20年

 宮城県民間資金等活用事業検討委員会は、宮城県上工下水一体官民連携運営事業「みやぎ型管理運営方式」に係る民間事業者の選定に当たり、メタウォーターを代表企業とするコンソーシアムを最優秀提案者に選定した。12日に委員長を務める増田聡東北大学大学院経済学研究科教授が村井嘉浩知事に答申した。

 同コンソーシアムが提案した20年間の事業費合計金額は1563億円で、県が試算した現行体制を維持した場合の運営権相当分に対して287億円の削減効果を見込む。宮城県は答申を受け15日に開いた政策・財政会議で同コンソーシアムを優先交渉権者に決定。

 今後、県は今年度内にコンソーシアムと基本協定を締結の上、6月議会に運営権設定議案を諮るなど、令和4年4月の事業開始に向けて準備を進める。同事業は、国内初となる上工下水一体のコンセッション事業にして、国内における上下水道事業の単独発注案件では異例の発注規模となる。基盤強化に向けた官民双方の取組みはこれからが正念場となる。

 「みやぎ型管理運営方式」は、水道用水供給2事業(大崎広域水道、仙南・仙塩広域水道)、工業用水道3事業(仙塩、仙台圏、仙台北部)、流域下水道事業4事業(仙塩流域、阿武隈川下流流域、鳴瀬川流域、吉田川流域)の計9事業を一体として運営権を設定の上、県が事業認可を有したまま民間活力を最大限活用し、経費削減や施設・管路の更新費用削減、技術継承、技術革新等を図るもの。

 昨年3月に参加募集を開始した公募型プロポーザルには3グループが応募。宮城県民間資金等活用事業検討委員会による選定基準に基づき、第一次書類審査と同年6月からの競争的対話、その後の第二次書類審査を経て、最優秀提案者の選定に至った。

 最優秀提案者に選定されたメタウォーターを代表企業とするコンソーシアムには、代表企業である同社のほか構成企業9社(ヴェオリア・ジェネッツ▽オリックス▽日立製作所▽日水コン▽メタウォーターサービス▽東急建設▽復建技術コンサルタント▽産電工業▽橋本店)が参画。

 審査では、構成企業が共同出資する新OM会社(運転・維持管理会社)の設立による安定的な事業運営と雇用創出、現行よりも厳しい水質管理目標値・指標値の設定、運転管理における上工下水一体の「統合型広域監視制御システム」をはじめとする最先端技術の導入、高度な健全性評価や劣化予測によるアセットマネジメントの最適化、外部有識者による改善モニタリング委員会の設置などの提案が高く評価された。

 ◇   ◇

 12日の答申後には両氏が懇談。増田委員長は審査結果を講評した上で、「上工下水道事業は住民にとって必要不可欠なサービス。今後の運営のあり方をこの段階で改めてご議論いただき、上工下水道事業の持続可能な展開に繋げていただけたら」と述べた。

 これに村井知事は、給水人口の減少や今後控える施設の大量更新を全国共通の課題として挙げ、「将来の料金高騰を少しでも低く抑えるべく、政府に水道法改正を働きかけるなど、本事業の実現に向けてここまで取り組んできた。来年4月に事業を開始できるよう、議会への提案など準備を進めていきたい」とした。

 また、村井知事はその後の報道陣の取材に対し、引き続き施設の所有権や各種料金の設定権を県が有すること、管路整備や災害時における復旧は県が担うことを強調したほか、「本事業では20年後に現状と同等かそれ以上の状態で施設を県に返していただくことを条件にしている。県民の皆さんにはご安心いただきたい」と述べた。

審査経過と概要

 事業者の審査は、参加資格要件に関する県による第一次審査の報告を経て、宮城県民間資金等活用事業検討委員会にて第二次審査を実施した。

 二次審査は、優先交渉権者選定基準に基づく書類審査に加え、プレゼンテーション等による提案内容の確認を踏まえ審査を行い、最も得点の高い応募者を最優秀提案者とした。

 同委の構成は次の通り。

 委員長=増田聡・東北大学大学院経済学研究科教授、副委員長=今西肇・東北工業大学名誉教授、委員=大泉裕一・公認会計士・税理士▽大森克之・宮城県総務部長▽佐々木雅康・弁護士▽田邉信之・宮城大学事業構想学群教授、臨時委員=大村達夫・東北大学名誉教授、東北大学未来科学技術共同研究センターシニアリサーチフェロー▽佐野大輔・東北大学大学院環境科学研究科准教授▽滝沢智・東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授

 審査には、最優秀提案者に選定されたグループ以外に2グループの応募があった。

 このうち、次点優秀提案者には、前田建設工業を代表企業とする9社のコンソーシアム「みやぎアクアイノベーション」が選ばれた。また、もう一つのJFEエンジニアリングを代表企業とする8社のコンソーシアムについては、提案のうちの「収支計画」において、一部の流域下水道事業において事業期間を通して突出した損失を計上する計画となっており「個別事業ごと総括原価の考え方にもとづいた提案となっておらず、個別事業ごとの健全運営に懸念が残る」とし、「標準未満」の評価となったことから、優先交渉権者選定基準に基づき、失格となった。

 両コンソーシアムの構成企業は次の通り。

 みやぎアクアイノベーション=前田建設工業▽スエズウォーターサービス▽月島機械▽東芝インフラシステムズ▽日本管財環境サービス▽日本工営▽東日本電信電話▽東急▽月島テクノメンテサービス

 JFEエンジ・東北電力・三菱商事・明電舎・水ingAM・ウォーターエージェンシー・NJS・DBJグループ=▽JFEエンジニアリング▽東北電力▽三菱商事▽明電舎▽水ingAM▽ウォーターエージェンシー▽NJS▽日本政策投資銀行

3者の提案額

 応募に当たっては、設定された上限額1653億円のうち、国庫補助を組み入れる流域下水道事業の改築費用(上限265億円)と、これを除く費用(上限1403億円〈運営権対価相当額15億円を含む〉)に分けて提案を受け付けた。

 3者の提案のうち、みやぎアクアイノベーションの流域下水道事業の改築費用を除いた提案額が調査基準額(1170億円)を下回ったことから、履行能力等の確認調査の対象となった。

 各提案者の提案金額は次の通り。

 メタウォーターグループ=運営権者事業費合計1563億円(流域下水道事業の改築費用260億円+運営権者提案額1305億円)

 みやぎアクアイノベーション=1389億円(流域下水道事業の改築費用250.4億円+運営権者提案額1140億円)

 JFEエンジ・東北電力・三菱商事・明電舎・水ingAM・ウォーターエージェンシー・NJS・DBJグループ=1538億円(流域下水道事業の改築費用264.9億円+運営権者提案額1277億円)


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