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海底管事例集の充実図る JWRC AーMARINE、追加調査が進行、年度内発行へ マイクリップに追加

平山委員長(右)とJWRCの小原信次管路技術部長

 水道技術研究センター(JWRC)は15日、海底送・配水管に関する事例集の作成に取り組む「AーMARINEプロジェクト」の全体会議をオンラインで開き、委員が調査状況を報告した。今年度はプロジェクト未参加事業体の事例を中心とした調査を進めており、昨年度の調査分と合わせて26件をまとめた事例集を年度末までに発行する予定。成果報告会の開催も検討している。

 AーMARINE(海底送・配水管の維持管理・更新に関する研究)は昨年4月に単年度事業として立ち上がったプロジェクト。名古屋大学減災連携研究センターの平山修久准教授が委員長を務め、海底管を保有する事業体と関連のメーカー・コンサルタント企業がメンバーとなっている。

 プロジェクトの目的は、海底管の▽調査・点検▽漏水事故▽更新・新設――に関する調査により、運営・維持管理に役立つ事例集を作成すること。昨年度は委員事業体を中心とした18の事例を調査し、一度は事例集を取りまとめたが、さらなる充実を目指して現在も調査を続けている。

 今年度は委員事業体のうち2事業体と、プロジェクトに参加していない5事業体の計8事例を対象に、メールやオンラインでの調査を進めてきた。今後は現地訪問を含めて内容を詰めていく。

 15日に開催した今年度2回目の全体会議では、調査を担当する事業体委員が進捗を報告し、各委員が追加でヒアリングするべき内容などを提案した。また、今年度から厚生労働省の生活基盤施設耐震化等交付金の対象として海底送・配水管の更新事業が追加されたことから、西山優輔委員(NJS)がその申請手続きについて説明。実際の申請をベースに作成した補助金要望書の書式例を示し、事例集への掲載に向けてブラッシュアップしていくとした。申請までの手順・フローについても整理する。

 事例集は2月ごろまでの完成を目指す。事業体・企業向けの成果報告会については、年度内に会場とオンラインを併用して開催する方向で検討を進めていく。

 【今年度のプロジェクト参画事業体・企業】熱海市▽淡路広域水道企業団▽宇和島市▽香川県広域水道企業団▽笠岡市▽上天草市▽上島町▽佐世保市▽下関市▽新居浜市▽姫路市▽広島県▽福山市▽JFEエンジニアリング▽大成機工▽日鉄パイプライン&エンジニアリング▽古河電気工業▽三井金属エンジニアリング▽NJS

平山委員長の話「水道文化を考える契機に」

 (10月3日の)和歌山市の事故や7日の首都圏での地震を見ても、やはり非常時には更新や維持管理が難しいところで脆弱性があらわになる。そういった観点からすると、このプロジェクトで扱っている海底管はより厳しい、つまり迂回路の設置などでのリダンダンシー(冗長性)の確保が簡単にできないものだ。

 われわれはさまざまな技術、いわば〝文明〟を持っている。しかし、例えば災害時の文明として緊急地震速報や津波警報を手にしていても、いざという時に避難しない。それは結局のところ〝文化〟が追い付いていないということだ。

 水道にも文明はあるが、「更新しよう」「維持管理していこう」という文化について、利用者を含めてもっとしっかり考えなければいけない。和歌山の例で言えば、あれだけ「南海トラフ地震が来る」「水の備蓄をしてください」と言ってきたことを思えば、市民の方から「一週間くらい断水しても大丈夫ですから」という声が上がってきてもいいくらいだ。水道文明を守っていくために、知識を共有し、水道文化に変えていく必要があるだろう。

 その出発点は、今日の会合のように事例や技術の情報を皆さんが共有し、自分たちで生かせるものは生かしていくことにある。そして、更新の重要性や今後の維持管理、国の経済的な支援を含めて、このプロジェクトが水道文化を考えるきっかけになればと思っている。


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