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神東塗料、原料・試験で不適切行為 ダク管など出荷止まる マイクリップに追加

 神東塗料(本社=尼崎市)が日本水道協会規格(JWWA K139)の認証品として製造・販売・出荷している「水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料(管用)」について、規格の規定と異なる条件下で得られた試験結果による認証の取得、規格に記載されていない指定外原料の使用といった不適切行為が確認された。同社は12日に不適切行為の対象となった12製品を公表、日水協品質認証センターは同日に判定委員会を開き、これらの認証を一時停止した。

 神東塗料では、対象製品の出荷を停止し、出荷先およびユーザーである管材メーカーに対して対象製品を塗装して製造した製品の出荷停止を要請。管材メーカーからの連絡を受けてダクタイル鋳鉄製品を使用した管路工事を停止している水道事業体も多くみられる。同社の塗料は国内における水道資機材の製造現場で一定程度のシェアを有していることもあり、水道界には大きな波紋が広がっている。

事業体の管路工事停止も

 ■JWWA K139

 日本水道協会規格「水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料」(JWWA K139)は、ダクタイル鋳鉄管およびダクタイル鋳鉄異形管の外面・接手部に塗装する合成樹脂塗料(一液性エポキシ樹脂塗料、二液性エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料)について規定したもの。組成(原料)や物性等のほか、継手の受口・挿し口では管内の水道水と接する箇所があることなどから浸出性についても定められており、製品を認証品として販売・出荷するには、製造過程でこれらの規定を満たさねばならない。また、製品の認証登録に当たっては、同規格で定める条件や方法等による試験を実施することが必須である。

 ■不適切行為の概要と神東塗料の対応

 尼崎市に本社を置く神東塗料は、昭和8年創業の塗料メーカーで、工業用・建築用・防食用・道路用塗料などを扱う東証一部上場企業。K139の認証登録は、平成13年11月1日付で取得している。

 今回の不適切行為は、昨年11月に社員の内部通報で発覚、その後に実施した社内の調査によって疑義の可能性が高いことを確認した。これを受け、1月初旬に日水協へ報告するとともに、出荷先であるメーカーに対して状況説明を行い▽対象製品の出荷を一時停止した▽在庫として保管している対象製品を使用しないでほしい▽対象製品を使用して製造された製品についても出荷を停止してほしい――旨を通知した。

 12日には、不適切行為の概要と対象製品の品名・型式、対応状況等を同社HPで公表した。同社のK139認証品は全24製品。同社によると、うち5製品はK139の規定と異なる条件下で得られた試験結果に基づいて認証を取得し、製品の販売・出荷を行った疑いが確認された。また、この5製品のうち4製品を含む11製品については、K139に記載がない指定外原料が使用されている疑いが確認された。さらに、K139相当品との仕様で製造・出荷していた非認証品2製品についても、試験条件および原料の点で仕様の条件を満たさない疑いがある。

 同社は、社外の専門家をメンバーに含む特別調査委員会を今週中に設置し、事実確認と原因究明を行うとともに、再発防止策等の検討を開始する予定。また、製造時期や製品別の影響の詳細についても特別調査委において検証するとしている。

 ■日水協の対応

 日水協の品質認証センターでは、同社からの報告の概要をまとめ、11日にHPで公表した。また、12日には判定委員会を開き、不適切行為の対象製品として同社が同日に公表した12製品について、「神東塗料から一部製品に係る不適切行為について公表があった」ことを事由として、認証の一時停止を決定した。今後は、同社の工場に対して立入検査を実施し、K139に規定する試験の記録や原材料の使用状況を確認する方針。

 ■事業体・厚労省水道課の対応

 水道管の出荷停止に伴い、事業体の管路工事への影響も広がっている。東京都水道局では、11日に水道管メーカーからの連絡を受けて事態を把握し、同日からダクタイル鋳鉄管を用いる工事を停止した。当該製品の使用状況や安全性に関する情報等を収集し、工事再開や既設管路への対応を検討する。

 このほか、本紙の調べでは数多くの事業体でダクタイル鋳鉄管を使用した管路工事の停止が確認されている。

 また、厚生労働省水道課では、日水協品質認証センターが11日付で公表した資料を都道府県水道行政担当部局および大臣認可の水道事業・水道用水供給事業者と共有。都道府県に対しては、知事認可の水道事業者等に対する本件の周知を求めた。


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