一部異形管で自粛続く 神東塗料不正問題、工期遅れに不安の声も マイクリップに追加
日本水道協会規格「水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料」(JWWA K139)の認証品における神東塗料の不正問題は、日水協による該当資機材の安全性と衛生性の確認により、資機材の出荷と工事再開が進む。
直管の出荷が戻りつつある一方、一部異形管・バルブは出荷できない状態が続いているほか、作業員確保が困難となり工事再開に支障をきたす事例も出ており、依然として今後の事業影響が懸念される状態が続く。一部工事への影響とともに、今後の資機材の出荷自粛の状況によっては配管が完了しても工期内に通水できない事態も想定され、工期の年度繰越を懸念する声も聞かれる。
日水協では会員等からの要請を踏まえて対応状況を随時発信。一刻も早い正常化に向け、出荷自粛要請が継続されている塗料・資機材の安全性と衛生性の確認作業が急がれる。
【関連記事:管工事業者の負担懸念 全管連理事会、塗料問題が話題に】
出荷自粛解除資機材の取扱い
日本水道協会では、17日に開かれた工務常設調査委員会と衛生常設調査委員会の合同会議を受けて同日夜、既存の試験結果資料から厚生労働省の「水道施設の技術的基準を定める省令」で定める衛生性が確認できた塗料の型式「クボタコートDip#300」「クボタコートEM#1001NT」を使用する資機材の取扱い方針を示した。
この2型式を使用する資機材について、すでに日水協の検査を合格している資機材はそのまま検査合格品とし、これから検査する資機材についても、各資機材の製品規格に規定する検査項目を満足していればJWWA規格品とするとした。
本措置は7月31日までの暫定措置となる。同日の会合では、この期間の設定理由について、指定外原料が使用された型式は「水道施設の技術的基準を定める省令」への適合が確認されたものもK139の認証継続は困難であることから、資機材メーカーにおいて使用塗料の変更が検討されることを想定し、その対応に必要な期間などを勘案した旨の説明があった。
出荷自粛要請中製品の今後の取扱い
日水協は同日、出荷自粛が続くK139認証品10型式を用いた検査資機材の今後の取扱い方針についても公表した。
まず、出荷自粛該当塗料については、「水道施設の技術的基準を定める省令」で定める浸出試験結果で衛生性が確認されることが、自粛解除の条件となる。すでに出荷済みであっても、該当製品を用いた資機材は出荷自粛要請の対象品となる。浸出試験結果で該当塗料の衛生性が確認されれば、その塗料を使用する資機材を検査合格品として取り扱い、出荷自粛要請を取り下げる。
一方、押輪や鉄蓋など水道水に接水しない資機材については、衛生性に影響がないことから、規定検査項目を満たせばJWWA規格品とする。
これらについても7月31日までの暫定措置となる。試験は40~55日の期間を要し、3月中旬から順次完了する見通し。
出荷自粛製品リストを公表
不適切行為対象製品(12型式)のうち10型式については、技術基準省令における衛生性が確認できず、これから全項目の浸出試験が行われる。これらの塗料を使用した検査合格品については、水道水に接水しない押輪・鉄蓋等を除き、各メーカーによる出荷自粛が続いている。
具体的な影響をユーザーに伝えるため、関係工業会3団体(日本ダクタイル鉄管協会、日本ダクタイル異形管工業会、水道バルブ工業会)は、会員会社の協力のもとで出荷自粛製品のリストを作成し日水協に提供。日水協は18日に同日17時時点のリストを公表した(その後19日17時時点の内容に更新)。
リストには出荷自粛製品の▽製造メーカー▽形式▽製品名▽口径▽備考――の5項目が掲載されている。作成に当たっては、ダク協が直管類、異形管工業会が異形管類、バルブ工業会がバルブ類の情報を取りまとめた。
19日17時時点のリストによると、直管に出荷自粛製品はない。異形管は4社の計34製品、バルブは4社の計4製品が出荷自粛となっている。
利用者への発信
本件を受け、水道利用者からは健康影響が不安視され、全国の水道事業体の管路工事にも大きな影響が出ており、各事業体は利用者・関係者への情報発信を図っている。
大阪市水道局では、14日に第1報をHPで公表。事案の概要と水道水への影響の可能性を図解するとともに、水道水質は定期水質検査で確認されていることなどを周知した。また、工事については、計画的な工事については原則停止するものの、緊急修繕対応は実施する方針を明示した。
盛岡市上下水道局では、今年度の全工事箇所で緊急の水質検査を実施し、過去の水質検査結果と変化がなく異常が見られないことをHP等で市民に周知した。
工事の状況
一部塗料の衛生性の確認とこれらの塗料を使用した資機材の自粛要請の解除を受け、水道事業体では続々と工事を再開した。しかし、作業人員や重機などの手配に影響が出ており、スムーズな再開が困難な事例もある。通水作業を見合わせて配管工事を進めた事業体や、影響のない工事を前倒して工程変更を行った事例など、現場ごとの試行錯誤も見られた。
一部の異形管資機材等の出荷自粛が続く中、工事進捗等への影響が現況の課題の一つとなっている。また、配管工事のみ先行して進めた場合でも、一部資機材の自粛が3月中旬まで続いた際には通水作業が年度末に集中することが予想され、次年度への工期繰り越しの懸念が高まっている。緊急修繕の対応については出荷自粛中の資機材を使用せざるを得ないケースもあり、事業体の現場では厳しい判断が迫られている。