DXと官民連携テーマに JWRC・新浄水プロ〝A-NEWWORK〟 マイクリップに追加
水道技術研究センター(JWRC)は25日、東京都内で第11期目となる新たな産官学浄水共同研究プロジェクト「浄水分野における新たな維持管理技術及び運営手法に関する研究」の発足式を開催し、オンライン参加者を含め約60人の産官学委員が出席した。今後約2年半にわたる同PJの研究概要・研究体制が紹介され、PJの愛称も「A-NEWWORK(Aqua-New and Efficient Water treatment Works Operation and Relating Knowledge、ニューワークプロジェクト)」と公表された。「新たで効率的な浄水施設の運営を目指す」という意味を名称に込めたという。
水道事業においても人口減少や施設の老朽化の増大によるヒト・モノ・カネの不足が顕著となる中、水道事業の基盤強化に資するため、研究テーマは「DX技術の活用による水道事業の効率化」「官民連携手法の活用」の2本とした。
一つ目のDX技術の活用では、浄水分野においても水質異常検知や機器異常診断用の各種センサ、および制御関連分野でDX技術の導入が図られてきており、ビッグデータの活用も模索されている中、情報収集を行うとともに、水道事業の将来像を視野に入れたDX技術の活用方策についての提案も目指す。研究例として、「センシング・制御技術」「ビッグデータの活用方策」「将来像を見据えたDX技術の活用」を挙げている。
二つ目の官民連携手法の活用では、水道分野でPPP手法が採用されてから十数年が経過し発注者・受注者の双方で各種の課題が出てきている中、課題について情報収集を行うとともに、より良い官民連携手法のあり方の提案も目指す。研究例として、「要求水準書・提案書の簡素化に関する検討」「モニタリングのあり方に関する検討」「従来法と官民連携手法(PPP)に関するサービス評価手法」を挙げている。
研究成果は、手引きや事例のような形で取りまとめ、水道事業関係者が参考となる情報を参照できるようにし、水道事業の効率化に貢献することをめざす。DX技術の活用や官民連携手法の活用により、新たな浄水手法や管理方法、新技術の採用の促進につなげることも目標とする。
上部委員会となる「浄水技術研究推進委員会」の委員長には京都大学大学院の伊藤禎彦教授が、副委員長には芝浦工業大学の伊藤雅喜非常勤講師とお茶の水女子大学の大瀧雅寛教授が就任。国土交通省がオブザーバーに。
同委の下部には、プロジェクト(PJT)委員会および二つの研究委員会を設置。
企業の代表者委員で構成されるPJT委員会の委員長には水ingの須田康司氏、副委員長にはクボタの山本丈氏が就任。15社の委員で構成される。
一つ目の研究テーマ「DX技術の活用」を研究する第1研究委員会の委員長には中央大学の山村寛教授が、副委員長には東京都立大学の酒井宏治准教授と東京大学大学院の橋本崇史准教授が就任。参加企業は、クボタ(幹事)、神鋼環境ソリューション、水道機工、水ing、月島JFEアクアソリューション、東京水道、東芝インフラシステムズ、日立製作所、フソウ、前澤工業、明電舎(副幹事)、メタウォーター、横河ソリューションサービスの13社。事業体は現在、東京都水道局と広島県水道広域連合企業団が参加。
二つ目の研究テーマ「官民連携の活用」を研究する第2研究委員会の委員長には八戸工業大学の鈴木拓也教授が、副委員長には福山市立大学の清水聡行准教授が就任。参加企業は、水道機工(幹事)、水ing(副幹事)、東芝インフラシステムズ、日本水工設計、フソウ、明電舎の7社。事業体は現在、横浜市水道局と今治市上下水道部が参加。日本水道運営管理協会がオブザーバーに。
第1、第2研究委員会ともに、今後さらに数事業体が参加する予定。
11月中旬から12月初旬にかけて二つの研究委員会の第1回委員会を開催予定。年度内には、さらに両委の第2回委員会を開催した後、第1回のPJT委員会と浄水技術研究推進委員会を開催する予定。各委員会のWGは適宜開催する。
安藤茂・JWRC理事長の話当センターが実施している産官学共同研究では、特に民間企業の方々には資金面や委員としての活動で多大なご貢献をいただいていることに、改めて御礼申し上げる。『三方よし』の言葉通り、産官学の皆さまにとって実りある成果が得られることを意識しつつ、プロジェクトに取り組みたい。
筒井誠二・国土交通省水道事業課長の話技術者不足等による官民連携の重要性が増す中、本プロジェクトにて技術開発が進むことによって、より効率的な維持管理・運営管理ができるようになるものと期待しているところだ。
伊藤禎彦・浄水技術研究推進委員会委員長の話センターの産官学浄水共同研究プロジェクトでこれまでなされてきた成果は、大学だけでもコンサルタントだけでもなしえない、よそではまねできないもの。世界的にも稀有な事例と伺っている。今後の2年半で水道界にとってさらに役に立つ成果をあげることに努めたい。
須田康司・PJT委員会委員長の話今後、皆さま方のサポート・ご支援をいただきつつ、業界にインパクトを与えることができる成果を作っていきたい。
山村寛・第1研究委員会委員長の話ヒト・モノ・カネが今後全て減少していく中で、それを補うものがDXだと考えている。水道の新たなアセットとしてDXを根付かせるには今後、どうしたらよいかを皆さんと議論していきたい。
鈴木拓也・第2研究委員会委員長の話私が住んでいる北東北は、人口減少が最も進んでいる地域であり、課題の先進地域でもある。卒業した学生の多くは東京等に出てしまい、地元に残る人も少ない。民間企業であれば、待遇改善で人が集まる場合があるが、公務員ではそうもいかず、疲弊している状況だ。第2委員会のテーマが官民連携ということだが、地方においては本当に有効な選択肢の一つだと思う。