工業用水道 持続見据え規模適正化 経産省が指針改正、ユーザー企業との連携が鍵 マイクリップに追加
経済産業省地域産業基盤整備課は「工業用水道施設更新・耐震・アセットマネジメント指針」を改正し、HP上で公表した。高まる更新需要と強靱化に対応しつつ持続可能な事業経営を実現するため、ユーザー企業などと連携しながら将来の水需要に適した契約水量・施設規模を検討していくことの重要性などを打ち出すとともに、工業用水道事業者が同指針に基づく実効性ある事業計画を策定できるよう、該当可否を確認するためのチェックリストを示した。契約解除に伴う契約水量の減量に際して需要者から徴収する「撤退負担金」の考え方を記載した「料金算定要領」の改正版も今後公表される予定。
改定版は、サステナブルな工業用水道事業の実現に向けて産業構造審議会地域経済産業分科会工業用水道政策小委員会に設置された「工業用水道事業の経営基盤強化等に向けたワーキンググループ」(委員長=長岡裕東京都市大学建築都市デザイン学部都市工学科教授〈当時〉)において検討されていたもの。WGでは、昨年9月以降に計4度の会合を開き、同指針や料金算定要領などの改正内容について議論を重ねてきた。
指針の総論では、大量の更新需要に対して強靱化を図りつつ持続可能な事業運営を行うため、現行の契約水量に基づく現行施設規模の維持を前提とせず、水需要の見込みや現行施設規模の余剰分の扱いを踏まえた適正な施設規模を検討した上で更新・強靱化・アセットマネジメントを実施していくことが重要であるとした。
合理的な施設規模の考え方としては▽ユーザー企業の撤退や今後の需要を踏まえた施設規模の適正化▽企業の立地によって現行施設規模分の需要を確保して更新を実施(現行施設規模を保持)▽新規誘致分を確保しながら更新を実施(同)――を提示。このうち新規誘致分を確保する場合については、現行の施設規模に見合う需要を確保できなかった場合に工業用水道事業者が過剰投資することとならないよう、商工部局等とのコミュニケーションのもとで検討するものとしている。また、商工部局等との協議内容はユーザー企業に対しても共有することとした。
なお、実給水量と大幅に乖離している場合には契約水量の見直しも併せて検討することとした一方、契約水量の減少は事業経営に大きな影響を与え得る場合があることに留意すべきだとしている。
工業用水道事業者が策定する「中長期計画」(更新需要および財政収支の見通し)は、同指針を踏まえて検討することとした。耐用年数が比較的長期となる施設を多く保有することから、計画期間は30~40年とし、10年程度で定期的な見直しを行うことが望ましいとしている。
なお、同課では指針に基づく計画の策定を工業用水道事業費補助金の申請要件とする方針としている。要件化の時期については、計画策定までに一定の期間を要することに鑑みて調整・検討が進められている。
このほか今回の指針改正では、契約水量に基づく責任水量制の料金制度を採用するケースが多い工業用水道事業の特性上、事業者とユーザー企業との間で〝適正な負担〟についての認識が一致していない場合があるとして、事業者とユーザー企業が互いに計画内容を共有し、事業内容に対して合意を図った上で計画を策定・実施することが望ましいとしている。
料金算定要領の改正では、撤退等による契約水量の減量に際して工業用水道事業者が当該ユーザー企業から徴収する「撤退負担金」について、料金収入の減少が工業用水道事業の健全な運営に支障を来すおそれに備える観点で検討しておくことが望ましい旨を明記する。現在実施しているパブリックコメントの結果などを踏まえ、近く改正版が公表される。...(残り-137文字)