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会員に寄り添い事業推進 日水協総会、青木理事長を再任 マイクリップに追加

400人超の水道関係者が参集

 日本水道協会は26日、第106回総会を東京・千代田区の砂防会館別館で開き、令和9年6月総会までを任期とする新たな役員・運営会議委員と6年度会計決算を承認した。直後の7年度第3回理事会では、代表理事(理事長)として青木秀幸氏が再任された。珠洲市の泉谷満寿裕市長が令和6年能登半島地震に係る応援活動への謝辞を述べたほか、東京大学先端科学技術研究センターの春日郁朗准教授による特別講演も行われた。

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  • 青木理事長
  • 松原上下審
  • 清田審議官

 第106回総会で開会あいさつに立った青木理事長は、能登半島地震や八潮市で発生した大規模な道路陥没事故、各地での漏水事故などに触れ、「国民の上下水道インフラへの関心が今まで以上に高まっている」との認識を示した。その上で、協会として掲げる国庫補助と管路更新率の二つの〝V字回復〟の実現に向けて協力を呼びかけた。このうち直近の管路更新率(0.64%)については「更新までに信じがたい年数がかかる状況」と危機感を示し、さらなる取組みの加速化を訴えた。これらの課題を国民に対して広報していくことの必要性も強調した。今年度からの新規事業である「水道の基盤強化ミーティング」「水道事業アドバイザリー制度」についても積極的な活用を呼び掛けた。

 来賓からは、国土交通省の松原誠上下水道審議官と総務省の清田浩史大臣官房審議官(公営企業担当)が登壇した。

 松原上下審は「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」で大口径管路の更新やリダンダンシーの確保などの方向性が、「上下水道政策の基本的なあり方検討会」では単一市町村にとらわれない国主導の経営広域化などの必要性が示されたことを報告。これを足がかりに令和8年度予算概算要求に向けて議論を深め、十分な予算の確保を目指すとともに、老朽化対策に関する新技術の開発・実装や技術基準の整備、制度の構築に取り組むとし、「水道の現状に対する健全な危機感を国と共有いただき、これまでの延長線上にない取組みにも積極的にチャレンジいただければ」と呼び掛けた。

 清田審議官は、水道事業を取り巻く厳しい現状を踏まえ、「防災・減災対策や施設の維持管理にもこれまで以上に注力していかなければならない状況にある」との認識を示しつつ、日水協が行う経営・技術に関する調査研究等の活動について「水道事業者の支えになっている」と敬意を表した。また、昨年度に設置した「上下水道の経営基盤強化に関する研究会」については、経営基盤の強化に向けた事業形態のあり方が議論されていることを紹介。参加者に対しては「引き続き経営改革に取り組んでいただき、今後とも安全で良質な水の安定供給を通じて地域住民の福祉の向上に一層のご尽力を」と呼び掛けた。

 承認された新たな役員・運営会議委員(再任を除く)は次の通り。

 【理事】山口真東京都公営企業管理者▽酒井雄一名古屋市水道事業管理者▽坂本篤則大阪市水道事業管理者▽桝原茂広島市水道事業管理者▽中村健児福岡市水道事業管理者【監事】尾根田勝(特別会員)▽清塚雅彦(同)

【運営会議委員】市原市▽葛城市▽高橋彰(特別会員)▽鈴木雅彦(同)▽アズビル金門(賛助会員)▽メタウォーター(同)▽NJS(同)▽水道機工(同)

春日准教授

 理事会後、再任のあいさつに立った青木理事長は「維持管理の時代において各事業体が抱える課題は同じものではなく、各々の事業環境に合わせた解決が求められる」との認識を示し、よりきめ細かな会員サポートに努める方針を示したほか、「明るい水道の未来に向けて、誠心誠意で職責を全うする」と決意した。

 特別講演では、東京大学先端科学技術研究センターの春日郁朗准教授が「これからの水道事業におけるPublic RelationS(PR)の視点」と題して講演。

 水道利用者のみを対象とした一方向の情報発信(広報)・情報収集(広聴)は、PR(宣伝)の一部に過ぎないとし、水道PRの最終目的は「社会インフラである水道と多様なステークホルダーとのより良い関係の構築・維持」であると指摘した。

 その上で、これからの広報概念の拡大を考える上では▽社会経済の変化の中で水道事業の課題を相対化すること▽論理・論拠・情理▽水道事業のポテンシャルを見出すこと――が重要な視点であり、加えて「国難級の災害に対する水道の覚悟」も踏まえることが必要だと強調した。

 総会終了後には、出席した正会員事業体が地元選出議員への要望活動を行い、全国的な管路耐震化の推進等を図るための予算増額や財政支援措置の拡充などを求めた。


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