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2022年117日 (月) 版

神東塗料不正問題、安全性・衛生性確認急ぐ 日水協、一部製品の性能確認 マイクリップに追加

 神東塗料(本社=尼崎市)が日本水道協会規格「水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料」(JWWA K139)の認証品に関する不適切行為を行っていた問題で、日水協は該当製品の安全性、衛生性の確認を急ぐ。日水協は、同社のK139認証品(全24型式)とこれを用いた日水協検査合格品の出荷自粛を依頼した上で同社の工場に立入調査を実施。問題のない認証品および検査合格品の出荷自粛の取り下げを進める。

 日水協は17日に緊急開催した工務常設調査委員会と衛生常設調査委員会の合同会議で不適切行為の内容やこれまでの対応経過を共有するとともに、認証品のうち既存の試験結果資料から厚生労働省の「水道施設の技術的基準を定める省令」に衛生性が適合すると判断し得る2型式を用いた資機材をJWWA規格品と同等と扱うことを確認した。流通量の多い資機材の衛生性が認められたことで、対応に苦慮する水道事業体の対応が前進するものとみられる。

順次出荷再開も影響続く

 17日の会合では、不適切行為の概要とこれまでの対応の経過、既存の試験結果資料に基づき確認された2型式の安全性、今後の対応方針が報告された。

 ■不適切行為の概要

 K139で定められている物性、浸出性、組成(原料・材質)のうち浸出性と組成において不適切行為が確認された。

 浸出性については、認証停止の対象となった12型式のうち5型式で確認。認証取得時にK139の規定よりも高温かつ長時間乾燥させた状態で得られた試験結果を用いていたほか、規定のない方法として、供試製品を水道水の流水で2週間洗浄していた。

 組成については、対象12型式のうち11型式(浸出性の不適切行為が確認された5型式のうち4型式を含む)でK139に規定のない原料を使用していたことを神東塗料が報告していた。日水協が今月13~14日に行った工場立入調査では、10型式で規定外原料が使用されていること、そのうち「クボタコートDip#300」の一部については規定原料のみを使用していること、残り1型式は廃止状態で生産されていないことを確認した。また、同社が規定外原料の使用を報告していない型式については問題がないことも確認した。

 ■14、16日に実施した自粛解除

 ◎対象外12製品

 神東塗料は12日に不適切行為の対象となる12製品を公表したが、7日時点では対象が不明確だったため、日水協は同日付で全てのK139認証品(24製品)について出荷を自粛するよう同社に要請。これらを使用した検査合格品についても、関係工業会に出荷自粛を依頼した。

 12日付の認証停止は「神東塗料による不適切行為の公表」に基づく措置であり、対象外の12製品は含まれなかった。13~14日の工場立入調査の後、日水協は「認証の一時停止に該当しない12製品を用いた検査合格品については問題ないことが確認された」とし、14日付で検査品の出荷自粛依頼を取り下げた。

 なお、神東塗料は14日付のリリースで、認証停止対象外の製品は出荷中としている。

 ◎クボタコートDip#300(速乾型)

 神東塗料のK139認証品の一つ「クボタコートDip#300」は認証登録上は1型式だが、実際には「速乾型」とそうでないものが存在する。神東塗料が12日に不適切行為の対象を公表した際、同製品については「速乾を除く」と注記していたが、同日付の認証停止では登録に基づき速乾型を含めた措置が取られた。

 日水協はその後、工場立入調査で速乾型が基準に適合していることを確認。16日付で速乾型の2品目(黒・グレーの色違い)に限って出荷停止等を解除し、検査合格品の出荷自粛についても取り下げた。

 ■既存の試験結果資料で確認された2型式の安全性

 速乾型を除く「クボタコートDip#300」の黒・グレーおよび「クボタコートEM#1001NT」については、K139の規定から逸脱するものの、厚生労働省の「水道施設の技術的基準を定める省令」における基準項目を規定の試験方法で満たしていたことを過去の浸出試験の記録から確認。日水協事務局では、これら2型式の使用に問題はないと判断し、これらを使用した検査合格済みの資機材および今後検査する資機材は、JWWA規格(各製品規格)に規定する検査項目を満足することが確認できた場合、JWWA規格品と同等とすることとした。

 ■不適切行為のあった塗料に関する今後の対応

 日水協は不適切行為のあった認証品塗料の一部型式の衛生性について、神東塗料の工場で試料採取に立合いの上、日本塗料検査協会でK139に定められる試験片を作成し、日水協が外部の試験機関に技術基準省令全項目の浸出試験を委託する。

 また、検査品の自粛要請を継続している10型式のうち技術基準省令による浸出試験結果で衛生性が確認された型式を使用する資機材については、各製品規格に規定する検査項目を満足することが確認できた場合、JWWA規格品と同等に扱うとともに、すでに検査合格済みの資機材はそのまま検査合格品とし、出荷自粛要請を速やかに取り下げる。

今後の展望

 日水協が14日に公表した「神東塗料(株)の不適切行為に係わる一連の諸問題に対する日本水道協会の対応について」により、長期化も懸念される不正問題の影響について今後の展望が見えてきた。

 日水協が示した出荷自粛解除の対応「ア・臨時立会検査で不適切行為がないと確認できたもの」「イ・既存資料で安全性が確認できたもの」「ウ・その他のもの」の順で、該当製品の安全性、衛生性が確認されていく。

 「ア」については、14・16日に不適切行為対象外の認証品と認証品を使用した検査合格品の出荷自粛を解除。工務常設調査委と衛生常設調査委を合同開催し「イ」についても対応を行った。「イ」の対応は、流通量の多い資機材が対象となるため、状況に大きな変化を与える。

 今後は「ウ」の対応が焦点となる。浸出試験には40~55日かかるとしており、サプライチェーンの完全な回復には、時間を要するとともに、関連した課題への対応も依然として懸念される。


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