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2022年912日 (月) 版

新体制で支援強化を 自民党水道・下水道議連、水道行政移管 関係団体が意見示す マイクリップに追加

2022/09/12 総合 政治
あいさつする田村会長

 自民党は7日、水道事業促進議員連盟(田村憲久会長)と下水道事業促進議員連盟(額賀福志郎会長)の総会を開いた。厚生労働省が所管している水道行政を国土交通省と環境省に移管する方針が決定し、国交省では水管理・国土保全局内で下水道行政との一体所掌が有力視される中、関係各省にヒアリングしたほか、関係団体から意見を聴収した。各団体は移管の方針を受け入れつつも、分割移管による水道行政の一体性・迅速性の低下や上下水道事業それぞれの十分な予算確保等に懸念を示しており、今後の法令整備や業務分担の検討動向に注目が集まりそうだ。

 水道行政移管は、2日の政府「新型コロナウイルス感染症対策本部」で大部分を国土交通省に、水質基準の策定等を環境省で所掌する方針が決定。国交省では、水管理・国土保全局において下水道行政と一体的に運営するものとみられている。今後は令和6年4月の移管を目指し、水道法や各省設置法をはじめとする関係法令の改正や具体的な組織体制等の検討が進められる。

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 7日の総会では、厚労・国交・環境の各省にヒアリングを行った。

 厚労省の佐々木昌弘生活衛生・食品安全審議官は、政府コロナ対策本部における方針決定の経緯を説明。今後の具体的な検討に当たっては「関係団体とも打ち合わせし、令和6年度予算の概算要求に向けて詳細を整備していく」とした。

 国交省水管理・国土保全局下水道部の松原誠部長は、「国交省の知見・能力・マンパワーを最大限発揮し、水道行政をしっかり受け止め、円滑な行政運営を引き継げるよう努力する。環境省との分割で水道事業体が困ることのないよう、留意していきたい」と述べた。

 環境省大臣官房秘書課の中尾豊課長は、「これまで河川等の公共用水域の水質基準など安全・安心を担ってきた。今後、水環境行政と水質行政を担うことになるが、国交省と連携を密にし、混乱のないより良い行政になるよう努める」とした。

 これを受け、日本水道協会の青木秀幸理事長、全国簡易水道協議会の北村政夫副会長(長野県青木村長)、日本水道工業団体連合会の木股昌俊会長、全国管工事業協同組合連合会の粕谷明博専務理事が発言した。

 青木理事長は、前日6日に厚労省への要望を実施した旨を報告した。

 【関連記事:一体性ある水道行政を 移管方針受け、日水協・青木理事長らが要望

 北村副会長は「地方自治体では上下水道一体になっているところが多いので、(行政の一体運営も)普通の状態だと思う。簡易水道は地理的条件が悪く、事業規模も小さいということをご理解いただきたい。国土強靱化や安全・安心確保の観点から簡易水道を維持できるよう、一体化後も予算確保については特段配慮されたい」と述べた。

 木股会長は「老朽化・広域化・民間連携促進など、水道・下水道は事業を安定的に継続するための共通課題を多く抱えており、行政の一元化も必要だと思う。行政が新体制となっても、社会資本整備の一翼を担う一員であることを自覚し、ご期待に応えられるよう準備していく」とした。また、関係者が一堂に会する展示会等の重要性に言及。「下水道展や水道展を今まで以上に活性化していかねばならない」として、新体制下における継続的な支援を求めた。

 粕谷専務理事は「管路布設工事の面では近いものがあるので(上下水道行政の一体化には)違和感を覚えない。一方、下水道の管路工事と水道の配水管工事は積算基準が異なる。この際、管工事業者にとって有利な下水道の積算基準に水道のそれが近づいていくことを期待している」とした。

 ◇   ◇

 同日には水道議連に先立ち、下水道議連の総会が開かれた。総会後、両議連の幹部が本紙の取材に応じ、水道行政の移管について所感を語った。

■田村憲久水道議連会長(下水道議連幹事長)

 ステークホルダーの意見を聞き、心配のないようにしていかないと。環境省と国交省の連携をしっかりしてもらうことも重要だ。現場の話をよく聞き、(上下水道事業が)WINーWINで動くようにしていくことが大事だ。下水道議連とも連携し、しっかりやりたい。

■額賀福志郎下水道議連会長

 上下水道は国民生活や地域経済に直結しし、片方だけを重視するものではなく、連携していくもの。一元化して行政を進めていくことは非常に大事。災害が起これば、国がコントロールする体制をつくることが、国民の生命・財産を守ること、生活を守ることにつながると考えている。

■盛山正仁水道議連幹事長(下水道議連事務局長)

 関係者の皆さんにとってはウェルカムだと思う。地方公共団体では上下水道を一体で扱うことが普通となっている。頭(所管省庁)が違うというのはなかなか面倒であり、一緒にしてほしいという声もあった。個々の事業者には飲み込まれる心配があるのもわかるが、全体としてはこの方向でお願いしたい。

■務台俊介水道議連事務局長

 良いことだが課題もある。衛生工学を専攻した環境省職員のキャリアパスをどう考えるかも一つの問題かと思う。自治体レベルでは上下水道を一緒にやっているから問題ないという議論もあるが、経営面の課題もある。水道行政が省庁をまたぐ中、弊害が生じないよう、議連としても見続けていく必要がある。


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