発展と飛躍 一丸で 日水協全国会議、神戸市で開幕 マイクリップに追加
日本水道協会の令和6年度全国会議が9日、神戸コンベンションセンターで開幕した。産官学の水道関係者が来賓・会員あわせ約3200人が参集する中、11日までの会期3日間で第105回総会や477編の知見が共有される水道研究発表会、特別講演などが繰り広げられる。9日の総会では会員提出問題26題について陳情活動の実施を決定した。併催の神戸水道展(主催=日本水道工業団体連合会)や初の試みとして設けられた「水道PRブース」も大いに賑わいを見せている。来年度の開催地は広島市。
昨年度に引き続き、日本水道協会全国会議と水道展の合同でオープニングセレモニーを実施。長内繁樹日水協副会長(豊中市長)、松原英憲国土交通省大臣官房審議官/上下水道、滝沢智水道研究発表会論文審査等合同会議委員長(東京大学大学院工学系研究科教授)、北尾裕一水団連会長(クボタ代表取締役社長)が開幕を祝した。
開会式では、はじめに開催地・神戸市を代表して同市の藤原政幸水道事業管理者があいさつ。全国の水道関係者の来訪を歓迎するとともに、「この全国会議が最新の知見等を取り入れる場となり、また水道界全体の技術革新や発展につながる場となることを確信している」と述べ、活発な交流や情報交換に期待した。
続いて、日水協を代表して長内副会長が登壇。耐震化をはじめとする諸課題の解決に向けて水道界一丸で取組みを進めていくことの重要性を強調したほか、国民の理解促進も不可欠であるとして「水道広報の加速化に向けた機運の醸成にお力添えを」と呼びかけた。
来賓からは松原官房審(松原誠大臣官房上下水道審議官の代読)、松本啓朗環境省水・大気環境局長、清田浩史総務省大臣官房審議官/公営企業(大沢博自治財政局長の代読)、北尾会長が祝辞を述べた。
松原官房審は、能登半島の被災地における応急給水・復旧対応に謝意を表した。また、半年が経過した行政移管について「水道事業が従来の殻を破って進化・飛躍するための大きなチャンス。国と考え方を共有し、施策を前に進めていただくことを期待する」と述べた。令和7年度予算については「新たな支援制度の創設と予算額確保に向けて全力で取り組んでいく」とし、耐震化の加速や管路更新率の向上に向けた積極的な取組みを全国の水道関係者に求めた。
松本局長は「長年にわたって蓄積してきた水質に関する専門的な知見を生かして水道水の安定供給と安全確保の一翼を担っていく」として引き続きの協力を呼びかけた。また、PFAS(有機フッ素化合物)の目標値等のあり方について「できるだけ早期に結論を取りまとめられるよう取り組む」とした。
清田審議官は「水道事業の持続的な経営確保を図るべく経営戦略の改定や広域化などを推進している。さらに、新たに立ち上げた『上下水道の経営基盤強化に関する研究会』の議論を踏まえ、必要な支援を行っていきたい」とし、安全で良質な水の安定供給を通じた地域住民の福祉向上について一層の尽力を求めた。
北尾会長は、能登半島地震や水道行政移管などに触れながら「自然災害に強い持続可能な水道サービスの構築に向け、水道産業界としてDXなどの先端技術を生かし、課題解決を実現するイノベーションを加速させていきたい」と述べ、水道展に多くの関係者が来場することを望んだ。
第105回総会では、全26題の会員提出問題を審議。財政支援の充実など過年度からの検討課題に加え、能登半島地震や水道行政移管に関連する時宜を得た項目も挙がった。このうち災害復旧事業における漏水調査・給水装置の取扱いと社会資本整備重点計画上の水道の位置付けに関する2題は、事務常設調査委員会から追加提案された。
会員提出問題は、全題を重要事項として関係当局に陳情することを決定。要望活動の実施方法は運営会議に附託した。
PRブースも盛況
なお、今年度は初の試みとして日水協・水団連が「水道PRブース」を設置。市民の来場を想定した体験型の展示等で〝蛇口の奥〟に対する理解促進を図っている。神戸市内の小学校から児童が来場し、地元の水道事業の取組みや浄水処理に用いる薬品の効果、耐震継手の仕組み、備蓄の大切さなどを学んだ。