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日水協、緊急時手引き改訂へ 来年度早々の公表・周知へ、能登地震の教訓を反映 マイクリップに追加

青木理事長

 日本水道協会は、災害等の発生時における会員相互応援のバイブル「地震等緊急時対応の手引き」を改定することとし、今年度内に最終案を取りまとめる。

 令和6年能登半島地震の応援活動で得られた教訓を反映するとともに、主務省の移管による国の新たな体制のもと、より円滑な応援体制を構築する。全国会議の開幕に先立って9日に神戸市内で開かれた今年度の第4回理事会で特別調査委員会の設置を決めたほか、主な論点や来年4~5月の公表を目指す今後のスケジュール案を共有した。

行政移管も踏まえ体制強化

 「地震等緊急時対応の手引き」は、阪神・淡路大震災の教訓を生かすことを目的とした「地震等緊急時対応に関する報告書」をもとに、新潟県中越地震などで得られた知見を踏まえて平成20年12月に策定された。その後、東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨などを経験する中、2次にわたる改訂がなされてきた。現行は令和2年4月版。

 今年1月の令和6年能登半島地震では、全7地方支部から応援隊が派遣されるなど、水道界の総力を挙げた応急給水・復旧支援が長期的に展開され、手引きの重要性が再認識された。一方、多くの基幹施設が被災し、半島部の地理的条件も相まって新たな課題が顕在化した。また、今年4月に水道行政が厚生労働省から国土交通省・環境省へ移管された中、災害対応については地方整備局等の知見や現場力を生かした支援が展開されており、より効果的な応援活動の実施に向けて一層の連携強化を図ることの重要性が増している。

 こうした背景を受けた今回の改訂は、能登半島地震で得られた教訓を応援ルールに落とし込むとともに、国交省などの関係機関と連携した円滑な応援体制を構築することが大きな目的となる。

 日水協では、能登半島地震に係る応援活動の振返りとして、被災3県支部(石川県・富山県・新潟県)と全7地方支部を対象に6月21日付でアンケート調査を依頼。その結果を手引き改訂の主な論点として整理し、特別調査委において幅広く議論するための参考として示すこととした。

 主な論点としては▽応援要請の迅速化▽支部長都市の被災時における代行都市の迅速な選定▽デジタル技術の活用等による情報連絡の効率化▽国交省など関係機関との情報共有と連携▽上下水道一体での復旧▽幹事応援事業体の役割▽派遣情報(宿泊施設等)の収集・提供▽自衛隊・国交省・日水協の応急給水先の整理・調整▽可搬式浄水装置の設置による補水の効率化▽応急復旧に係る効率的な班編成のあり方▽マッピングシステムの整備・更新の重要性▽資機材調達スキームの整理▽SNS等による情報発信の重要性▽費用精算に係るスケジュールの明確化――などを挙げている。

 特別調査委は、会長・地方支部長都市などで構成。オブザーバーとして国交省や日本水道工業団体連合会、全国管工事業協同組合連合会などの関係機関・団体にも参画を求める。11月上旬の初会合を皮切りとして今年度内に4回の会合を開き、最終案を取りまとめる。

 なお、事務局では「応援体制・情報連絡等に関する小委員会」や「応急給水・応急復旧等に関する小委員会」の設置も想定する。特別調査委の初会合で要否を判断し、設置が決まった際は全体のスケジュールに応じて適宜会合を開く。

 ◇   ◇

 8日の理事会であいさつに立った日水協の青木秀幸理事長は、開幕を翌日に控えた全国会議について「関係者の連携を顔の見える形でより一層強固なものとし、水道界一丸で課題解決に取り組む契機となることを心から祈っている」と述べ、成果に期待した。


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