事業持続へ多数の話題 POLITEC、6件の演題で講演会 マイクリップに追加
配水用ポリエチレンパイプシステム協会(POLITEC)は1月30日、福岡市内で第12回講演会を開催。国土交通省や総務省、福山市上下水道局、全国簡易水道協議会の眞柄泰基相談役らによる水道事業の基盤強化や持続、災害対策といった現在の水道事業の課題に関する6件の講演があり、事業体職員ら約180人が聴講した。
国土交通省水道事業課の中井隆課長補佐は「水道事業の基盤強化について~適切な資産管理の推進~」と題し、講演。昨年の能登半島地震では、耐震化が未実施であったこと等により浄水場や配水池、下水処理場に直結する上下水道システムにおける「急所」となる施設が被災したことで、広範囲の断水や復旧の長期化等につながったことを挙げ、同様の施設において全国で実施された緊急点検結果においても、重要施設に接続する水道と下水道の管路がともに耐震化されている割合が全国平均で約15%に留まっていることに警鐘を鳴らした。
一方、令和3年度の地方公営企業年鑑によると、全国の約40%の事業体が原価割れとなっており、特に給水人口が1万人未満の事業体(簡易水道を含まない)では約60%が原価割れしている。また、水道事業の職員数もピーク時から約4割減少しており、計画的な更新を行うためのリソースが不足している現状を紹介した。
こうした現状において適切かつ計画的な施設・管路更新を進めるため、中長期的な収支見通しに基づくアセットマネジメントの精緻化(タイプ4D等)を求めた。
総務省公営企業経営室の髙岡大輔水道・工業用水道事業係長は「水道行政の動向」と題し、講演。各公営企業が将来も安定的に事業経営を行うための基本計画「経営戦略」について、毎年度の進捗管理や計画実績との乖離検証、および料金水準適正化の議論等を反映して、令和7年度までの改定を要請している。
また、7年度予算における地方財政措置の拡充内容を紹介。水道管路耐震化事業では、7年度から用水供給事業者を対象に追加。算出基礎も管路耐震化事業費となるが、7年度は6年度の算出方法による算出も可能。8年度からは、7年度末時点で経営戦略を改定していることが要件となる。
「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」の支援分野には、7年度から地方公共団体間の広域連携(公共施設の集約化等、専門人材の確保、事務の共同実施)が加わっており、積極的な活用を呼び掛けた。アドバイザーには、事業体OBや公認会計士、学識経験者等、多数の専門的人材が登録されており、申請団体が選択。アドバイザーの派遣費用は地方公共団体金融機構が負担するため、団体の負担はない。
福山市上下水道局工務部管路整備課の山本悠二氏は「福山市における水道配水用ポリエチレン管の取組み」について講演。同市では、アセットマネジメントおよび第9次配水管整備事業計画に基づき毎年約40kmの管路を更新している。昨年度は約43kmの管路を更新(更新率1.31%)、うち配水用ポリエチレン管は約37kmを占める。
同市の中心部は干拓で造成された土地で腐食性の高い粘土質であり地下水位も高い。高度成長期に布設した塩ビ管からの漏水が年間約300件発生していることなどから、平成18年度から配水用ポリエチレン管を口径50~150mmで採用している。
同市では、16年間に布設した口径75~150mmの配水用ポリエチレン管(367km)による経済効果を約88億円と見込む。口径50mmを含むと総延長は約642kmになるが、不具合は一度も起きていないことも紹介した。
POLITECの塩浜裕一技術委員長は「水道配水用ポリエチレン管の最新動向に関する報告」と題し、講演。能登半島地震被害調査の中間報告として被害状況を紹介。標線まできちんと管が挿入されておらずインジケータが上がっていなかった施工不良(融着接合不良)によるものが羽咋市で1件、珠洲市若山配水池でのSUS管と配水用ポリエチレン管のフランジ接合部からの漏水が1件、珠洲市若山地区での大きな地盤変動によるベンド部の破損が複数件あった。今後、再現実験等も実施し、より地盤変状の実態に合った管路設計につなげていく考えも示した。レベル2地震動観測地点を含む地震動、および液状化による被害は確認されなかった。
能登半島地震においては、輪島市で口径150、200mmを中心に多数の配水用ポリエチレン管が仮設配管として活用されたことも紹介。異なるメーカーの管路も問題なく融着接合されている。
簡水協の眞柄相談役(北海道大学公共政策学研究センター研究員)は「水道事業の持続のために」と題し、講演。令和元年時点で石綿セメント管が0.5%、普通・高級鋳鉄管が1.7%残存し、かつ鉛製給水管も更新が鈍化している現状を紹介するとともに、今後の管路更新率を0.8%とした場合でも更新需要が今後急速に増え続けるため、料金上昇は不可避であると強調した。
浄水施設においても更新需要が増大するが、施設利用率はすでに大きく下がっている現状を挙げ、広域化を行っても安易な形態では効果が少ないこと、民間の技術力の価値をもっと評価する必要があることを強調した。
今後の事業の持続において非常に重要な課題である人材の確保については、仕事を働き甲斐と魅力が高いものにしていくこと、具体的には待遇改善や技術力向上のためのインセンティブ、資格による社会的評価の向上等を挙げた。
また、今後特に求められる視点として住民参加を挙げ、料金支払い意思を持続させるために利用者の意思が反映される体制の整備や、住民参加によるアセットマネジメントシステムの構築等を勧めた。
冒頭、髙山純会長は「当協会は来年の2月で設立30周年を迎える。これまでの間、水道配水用ポリエチレン管が財政面・機能面等で高い評価をいただき、令和4年度からは日本水道協会の検査実績における延長距離でトップシェアに立っている。また、当協会は環境面でも取組みを進めており、SDGsにおいて8項目で取組みを進めている。うち、カーボンニュートラルに対しては、二酸化炭素排出量の数値を間もなく公表する見込みだ」とあいさつした。
会場では、配水用ポリエチレン管・継手やスクイズオフ工法のデモ機、施工工具、製品・工法等のパネルが展示され、来場者が足を止めて見入っていた。





