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災害用井戸・湧水 登録制度の導入加速へ 内閣官房、利用ガイドラインを公表 マイクリップに追加

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 内閣官房水循環政策本部事務局は17日、「災害時地下水利用ガイドライン―災害用井戸・湧水の活用に向けて」をHP上で公表した。令和6年能登半島地震に伴う断水長期化などを教訓とし、被災直後における生活用水の代替水源として地下水の活用を推進すべく、地方自治体が災害用井戸・湧水の登録制度を運用する際の考え方などを整理した。災害時の対応を円滑化する観点から、登録情報等を水道担当者と共有しておくことの意義にも言及した。

 19日に開催された説明会では、策定に携わった「災害時における地下水等活用推進に向けた有識者会議」の遠藤崇浩座長(大阪公立大学現代システム科学域教授)が災害用井戸の有用性を七尾市での活用事例に触れつつ強調した。

 能登半島地震の被災地では、住民の声掛け等をきっかけに個人・企業所有の井戸や湧水が自発的に開放され、代替水源としての有用性が再確認された。一方、全国に目を向けると、地下水を代替水源として活用する旨を地域防災計画に明記しつつも自治体主導の実効的な取組みに至らないケースが散見される。

 こうした背景のもと策定された同ガイドラインでは、地下水利用に際して検討・把握すべき事項を▽取組みの進め方▽効果的な配置場所▽既設井戸・湧水等の所在地▽新設井戸の必要性▽井戸工事の流れ▽活用可能な国庫補助制度――の観点で示すとともに、災害用井戸・湧水の事前登録に係る取扱要領の策定・運用を促進すべく、制度整備の必要性や登録要件の考え方、利用に際しての留意事項、手続きの流れ、実際の策定例、公表・周知方法などを記載した。

 井戸の新設については、事前防災を図る観点で検討することが望ましいとしつつ、断水が長期化した際に水道が復旧するまでの水を確保する手段等として検討することも有用だとしている。

 災害用井戸・湧水の登録要件としては▽災害時における原則無償での提供が可能である▽所在地等に関する情報提供が可能である――ことを例示の上、必要に応じて追加するものとした。

 登録に当たっては、利用上の事故防止を図る観点から現地確認に努めることとした。また、登録済み井戸・湧水の情報を水道部局等の関係部署と共有するとともに、デジタル地図形式での表示など使いやすい体裁での整理・管理を進めることの重要性も指摘している。

 利用上の留意事項では、災害時の利用前に緊急的な点検を行うことが望ましいとした。また、電動・手動の切替えが可能なポンプを用いることで停電対策を図ることの有効性も記載している。

 なお、同ガイドラインで登録を推進する井戸・湧水の用途は主に生活用水だが、水質等が確保される場合には飲用も差し支えないとしている。飲用等に使用する際には、各自治体が定める井戸等利用の衛生管理に係る要綱や厚生労働省「飲用井戸等衛生対策要領」などに基づく水質検査の実施が推奨される。

 ◇   ◇

 19日の説明会であいさつに立った齋藤博之事務局長は「地震や風水害などの災害は全国どこでも起こり得る。本ガイドラインはこれから災害用井戸に係る取組みに着手しようとする地方自治体にとって理解しやすいよう、業務の手順等を整理した。地域の防災力向上に資することを期待している」と述べた。

 遠藤座長は「災害用井戸の必要性」について講演。能登半島地震の発災直後から七尾市内で見られた有志による井戸の解放を事例として取り上げ、その提供開始時期の早さや箇所数の多さなどに言及した上で、災害時における地下水利用のメリットとして早い・安い・広いの3点を挙げた。24時間の開放も可能であり、住民のライフスタイルに対応した柔軟な給水体制の構築に寄与することも強調した。

 このほか説明会では、事務局からガイドラインの記載事項について解説があった。

 また、鳥羽市総務課防災危機管理室の澤田将宏副室長が同市における災害用井戸登録制度の運用状況を紹介。井戸の調査・申請・検査に係る手続きを町内会・自治会が実施することで業務を効率化しているほか、詳細な位置図等を災害時に限って公表することで井戸所有者のプライバシー保護と積極的な登録の推進を図っているとした。...(残り-127文字)


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