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能登に一層の支援を 日水協中部総会、石井氏が示唆に富む講演 マイクリップに追加

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 日本水道協会中部地方支部(支部長=広沢一郎名古屋市長)は18日、富山市内で第103回総会を開いた。事業の継続や災害対応等に関する会員提出問題を19題審議し、いずれも重要として10月の全国総会への上程を決めた。議事後には、能登被災地への支援状況などが共有されたほか、石井晴夫東洋大学名誉教授が「上下水道事業における新たな経営基盤の強化策~水道料金算定要領の改訂を踏まえて~」と題し特別講演を行った。

 冒頭、開催地を代表し、藤井裕久富山市長が「能登半島地震による現地の水道施設の被害は大きく、市民生活への影響が未だ続いている所があり、復旧には大変な労苦が伴っていると聞く。1日も早い復旧・復興を願うとともに、得られた教訓に学び、地震対策と支援体制の強化の必要性を改めて強く認識させられている」とあいさつし、活発な意見交換により実りある会議となるよう望んだ。

 主催者を代表し、名古屋市の酒井雄一上下水道局長が広沢支部長に代わりあいさつ。「ここ北陸地方で昨年発生した能登半島地震、および奥能登豪雨で被災された事業体は、現在も非常に長く苦しい復興の途上にある。両災害に対し、皆さま方には、苦しい台所事情の中、復旧・復興活動に長きにわたってご従事をいただき、厚く御礼を申し上げる。今後も当支部では、被災地への派遣職員のヒアリングや現地調査の結果を踏まえ、また国や協会本部とも相談を続け、できる限りの支援を継続していきたい。引き続きご協力をお願いしたい」と投げかけた。

 日水協の青木秀幸理事長は「特に中小規模の事業体で財政基盤や職員体制の脆弱化が進み、水道の持続自体が危ぶまれる状況になってきている。当協会ではこの状況を踏まえ、国庫補助と管路更新率の二つのV字回復を関係各位にお願いさせていただいている。適正な料金負担を含む財源確保に基づく計画的な管路更新がV字回復には必要であり、改めて更新事業の促進をお願いしたい」とあいさつした。

 来賓祝辞では、国土交通省水道事業課の濱田佳大課長補佐(上下水道審議官代読)、総務省の内村重和公営企業経営室長(自治財政局長代読)、高田重信富山市議会議長が登壇した。

 昨年度中の支部の動きとして、昨年9月に発生した奥能登豪雨の影響で珠洲市・輪島市で断水が生じたことを受け、石川県支部からの応援要請に基づき、支部管内の25事業体が応急給水と応急復旧活動を行った。11月には日本水道運営管理業協会から奥能登豪雨被災に対する災害支援金を受領した。また賛助会員に、NJS名古屋総合事務所、中部電力、桑名金属工業、フタムラ化学、ミナミサワの5会員が入会した。

 今年度は、例年通例行事に加え、8月以降に能登半島地震と奥能登豪雨における応援活動の振り返り会議を開催予定。

 会員提出問題は次の通り。▽水道事業に対する財政支援の拡充および採択要件緩和▽水道施設の災害対策に対する財政支援等▽災害時における電力および通信ネットワークの確保▽災害時の応援活動に対する支援の充実▽放射性物質を含む浄水発生土の処理および損害賠償▽水道施設の更新・長寿命化・廃止等に対する財政支援▽多目的ダムの維持管理等に係る負担金(特定多目的ダム法第33条)の軽減▽水源涵養に係る財政支援措置▽有機フッ素化合物の対策に係る財政支援等▽公的資金補償金免除繰上償還制度および公営企業借換債制度の復活▽公的資金貸付条件の緩和▽水道事業に対する過疎対策事業債の拡充▽地下水利用等による専用水道に係る法整備等▽配水管等の耐用年数の見直し▽水道メータの検定有効期間の見直し▽統合後の旧簡易水道事業に対する財政支援▽ウォーターPPPの導入検討に関する積極的な情報提供▽水道事業広域化に対する財政支援の見直し▽スマートメータ導入に対する財政支援

 総会後、濱田課長補佐と内村室長がそれぞれ行政説明。また支部事務局からは、能登半島地震における支援状況が紹介された。うち、中長期派遣による支援は、3月27日付の国交省水道事業課の事務連絡によると、全国で18人が被災事業体に派遣されているが、一方で被災事業体からは17人分の追加派遣要望が出ており、被災事業体の窮状に対するさらなる支援を求めた。

 次回の開催地は鳥羽市に決定。同市の河原光寿水道課課長補佐が歓迎のあいさつに立った。

 石井名誉教授は講演で、今回の日水協の料金算定要領の改訂により、同要領に計算式や算定率が明記され、具体的な基準も示されており、料金改定の頻度が少ない事業体にも使いやすいものとなっていることを紹介。将来の企業債残高を増やさず、かつ事業を継続するために必要な維持管理を行っていくため、適切な額の資産維持費を算出する必要性を強調した。


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