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世界初の管路包括実証 東亜グラウト工業、久留米市での成果を報告 マイクリップに追加

 東亜グラウト工業(山口乃理夫社長)は7月24日、久留米市において実施していた人工衛星とAI技術を活用した水道管路マネジメントの包括的実証事業の最終報告会を同市企業局庁舎で開催し、石原純治企業管理者をはじめ同局関係者が参加した。

 事業は、管路GISデータの整備(クレンジング)から人工衛星による漏水探知、AIを活用した管路劣化診断、管路更新計画の最適化までをワンパッケージ化する世界初の試み。持続可能な水道インフラの実現に向け、限られた資源で最大限の効果を発揮するモデルケースとなることを目指す。

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 同実証事業は昨年9月から今年3月までの約半年間実施された。同社をはじめ、国内外の先進企業4社(応用技術、オートデスク、アステラ、オプティマティクス)が技術協力で参画している。

 報告会ではまず、同社管路グループ水道事業部の結城啓治アイスピグ部長が、今回の実証を「八潮市の道路陥没事故のような重大事故を未然に防止するという観点のもと、管路の劣化度・影響度・重要度の3要素を踏まえた検討を行い、最適化された更新計画の立案が可能になった」と総括。また、全ての検討の基礎となるGISデータの整備の重要性にも言及した。

 続いて、4社の担当者が成果報告を行った。応用技術社は、管路GISデータのクレンジングを担当するとともに、オートデスク社が提供する管路アセットの状態監視・評価ツール(Info360Asset)を活用し、管路の簡易評価を実施。この結果としてAI解析に用いるデータの収集および整備、管路評価(LoFおよびCoF)の結果について報告。埋設年度や漏水履歴等のデータに欠損があった場合の補完・修正手法をはじめ、植生や軌道といった管路の埋設された周辺環境の情報についても、一つひとつの管の位置に応じて付与したことなどを紹介した。

 アステラ(ユーティリス)社は、人工衛星による漏水調査技術「アステラ・リカバー」を用いた解析結果等を報告。人工衛星による調査(1次調査)、1次調査の結果に基づく現地音聴漏水調査(2次調査)を通じて、漏水疑い箇所の特定を行っていく手法を紹介した。

 オプティマティクス社は、AI等を活用した更新計画最適化支援ソフト「アセットアドバンス」によるAI劣化予測・更新計画最適化を報告。AI機械学習アルゴリズムによって、今後起こりうる漏水発生回数の予測モデルを管路1本ごとに構築し、劣化予測を行うもので、1次調査・2次調査によって得られた漏水データを劣化診断にも反映することで、予測の精度がさらに向上するとした。また、今回の実証で重視する、管路の更新計画をさまざまな項目を考慮して策定する最適化手法についても説明した。

 最後に山口社長があいさつ。インフラ全般のメンテナンスを一貫して担う、同社の「トータルメディカルシステム」の考え方に基づく事業であるとしつつ、同市での成果を他自治体にも広げていく意欲を語った。

 続いて石原企業管理者は「皆さまの技術力やノウハウを活用し、精度の高い成果品をいただいたことに感謝する。当局が目指す経営の効率化や業務の品質向上において、新たな領域に足を踏み入れたと感じている」と所感を述べ、今後にも期待を寄せた。


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