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社説 水道の未来をともに マイクリップに追加

2021/01/01 社説

 世界中で、猛威を振るう新型コロナウイルスによって160万人以上の多くの命が失われている。ワクチン接種が英米で始まったとはいえ、未だ収束に目途が立たず、感染への恐怖と脅威がこれまでの日常を奪っている。令和時代として初めての元旦を迎えた一年前、今の景色を一体誰が想像できただろうか。エッセンシャルワーカーとしての水道界は、この難局を如何に乗り越えようとしているのであろうか。

 令和元年10月に改正水道法が施行され、わが国の水道は基盤強化への道のりを着実に歩んでいくはずであった。ところが新型コロナウイルスの感染拡大によって、業務用途での使用量減少や水道料金の減免措置等が経営にも影響を及ぼし、中長期的な事業執行の弊害となることが懸念されている。公衆衛生を担う水道の使命に懸命に向き合いながらも、地域経済の持続確保に貢献しているが、官民共生を軸としたパラダイムシフトがさらに求められるだろう。

 厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症の影響による水道料金の支払い猶予など措置の実施状況調査」によると、昨年10月15日時点で支払い猶予の合計金額は23億7159万円、減免合計額に至っては470億656万円にも上る。感染再拡大を引き金に同様の措置が継続・延長していくことになれば、国の水道事業関係予算を上回ってしまうほどの規模にもなりかねない状況なのだ。

 日本銀行が年末に発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、昨年の全規模全産業における設備投資額は前年度比3.9%減となり、前回の9月調査(前年度比2.7%減)からさらに下方修正された。民間企業の動向を伺うと、新卒採用も2021年は大幅減の傾向が見られる。感染状況の長期化を見越して企業は守りを固めている状態である。

 このコロナ禍の中で、昨年4月の緊急事態宣言下においても、上下水道事業者は当然の使命として、水の安定供給や環境衛生の確保など日々の暮らしを守るために懸命な努力を続けて今日に至っている。蛇口を捻ればいつでもどこでも安全な水を飲むことができる、高水準の水インフラシステムが完備されていなければ、医療行為もままならず、現状以上の感染拡大となっていたことは想像に難くない。

 水インフラを守る肝心の水道プロフェッショナルが減ってきている事実も軽視してはならない。水道統計によると、現在の水道事業体職員数は5万人を割り、1980年のピークから3割程度減少した。厚生労働省による推計では、2050年にはこれが3万5000人まで減ると見込まれている。給水人口も1億人を切るとみられるが、水道職員1人当たりの給水人口は2015年の2500人弱が2050年には3000人弱となる。民間委託が進捗してきたので、事業に従事している民間の社員数も加味すべきだが、一人当たりの負担が軽くなっていくわけではないだろう。

 広域化や官民連携、地域の強靱化など水道の基盤強化を推進していくためには、専門知識と現場経験を積み重ねた人材の確保が不可欠だ。上下水道事業者や水道産業界も原資の枯渇への不安から投資抑制傾向となりがちだが、〝エッセンシャルワーカー〟とも称される公衆衛生の要として、中長期を見据えた人材の育成と確保に今こそ注力すべきだ。

 新型コロナウイルスは社会環境を一変させ、ライフラインの要となる水道事業においても、基盤強化への本格的な動きに水を差している。反面、公衆衛生への貢献や水道そのものの真価が再認識されるなど、すべてがマイナスに作用しているわけではない。

 人口減少、少子高齢化の加速により、省人化・省力化や施設共用化といったこれからの水需要に照らしたシステムの大再編をはじめ、直面する課題は多岐にわたっている。

 今まさに国難の渦中にあり、また将来が不透明かつ不安定な社会だからこそ、専門報道機関として情報の深層に軸足を据え、紙面を通じて逆境に立ち向かう人々の英知と行動力の結節点となり、読者とともに水道界の未来を考えていきたい。


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