一層の漏水対策強化へ 神奈川県、AI等活用の共同研究を マイクリップに追加
一層の漏水対策強化を目指す神奈川県企業庁は7月から、AIによる先進的な調査技術の共同研究を開始した。研究は①漏水音AI判定による漏水調査業務の省力化の実証研究②AI管路劣化診断に基づく漏水監視センサーの配置と常時漏水監視に関する研究――の2件。
①の提案者は、水道テクニカルサービス(代表提案者、大島健司代表取締役)、wavelogy(道上竣介代表取締役社長)、フソウ(角尚宣代表取締役社長執行役員)の3者。令和8年度までを研究期間としている。
②の提案者は、フジテコム(代表提案者、森山慎一代表取締役社長)、フジ地中情報(アントワーヌ・アラニャ代表取締役社長)、東京都立大学都市環境学部・荒井康裕准教授(技術協力)の3者。9年度まで研究を行う。
開始に当たり同庁は7月16日、提案者との間で協定書締結式を開催。①について同庁の浦邊哲企業庁長、大島代表取締役、道上社長、フソウの鈴木慎哉取締役・専務執行役員が、②について浦邊企業庁長、森山社長、アラニャ社長が協定書に署名した。代表提案者等による研究の説明なども行われた。
①の目標は、熟練した技術者に頼らず、効率的・効果的に漏水を発見できる調査方法を構築すること。日本水道管路管理協会の監視型漏水調査システム「AIMS」とwavelogyのAI漏水判断システム「SuiDo」を組み合わせ、水道管における漏水音特定の省力化を試みる。
研究では、水道テクニカルサービスが漏水箇所の範囲による絞り込みや漏水音の収集など現場作業を担当。wavelogyが漏水音をAI解析し、漏水箇所の特定を図る。フソウは、一連の漏水判定が実装された場合を想定した全体評価を行う。
研究について概説した大島代表取締役は、漏水調査における技術者不足への課題意識を研究の背景として指摘。「それぞれの強みを生かしながら良い成果を求めていきたい」と意気込んだ。
②の目標は、広いエリア内の漏水を効率的・効果的に常時監視・検知できるモデルを構築すること。さまざまなデータから、AIにより地域特性に応じた管路劣化状況診断を行い、それに基づき水道管監視センサーを最適に配置。センサーから送信される漏水音を収集し、漏水判定の自動化を試みる。
研究の概説には、森山社長とアラニャ社長らが登壇。説明によると、管路劣化診断にはフジ地中情報が開発したAIを使用する。診断に基づき、フジテコムが最適なセンサー設置箇所を決定。センサーが収集した音声は画像データに変換し、AI解析を図る。最終的には、同庁の漏水調査実績に基づく漏水発生パターンをはじめとする特有の事象をインプットさせた専用のモデルを構築し、AI劣化診断と漏水判定の精度に関する技術向上につなげたい考え。研究評価は、荒井准教授が担当するという。
協定締結に先立ち、浦邊企業庁長があいさつ。6月28日に鎌倉市で発生した漏水事故に触れ、「老朽管の更新とともに漏水調査をしっかりとやっていきたい」とし、「共同研究は非常にありがたい」と謝意を表した。研究成果に期待を寄せた上で、「実用化に向け、同じベクトルで進んでいければ」と協働への意気込みを示した。