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社説 〝命の水〟届ける使命 マイクリップに追加

2024/01/08 社説

 日本列島全体が安息の空気に包まれる元日の夕刻を震度7の激震が襲った。日常生活を支える水の価値は、被災地において、一滴すらも希少な〝命の水〟へと一変した。

 震源に近い能登北部地域では、水道施設が甚大な被害を受け、全域で断水が続く。水を求める被災者の声は後を絶たず支援を待ち望むものの、交通網も寸断されてしまった。

 被災から3日が経ち、道路啓開の報を受け、日本水道協会中部地方支部を通じて派遣した給水車が金沢から半日以上を費やして、能登半島の北端の自治体に応急給水を行ったが、空になった給水車に充水する安全な水が確保できず、再び半日以上をかけて引き返すことになった。先行して応急給水に当たる自衛隊も水の確保に苦戦する状況が続いている。

 中でも被害が大きい輪島市、珠洲市の支援に入った職員は、給水車の輸送路確保で混乱に直面し、ようやく辿り着いた被災地の想像を超えた惨状に愕然としたという。

 被災状況を把握するにも、現地には対応できる人材が限られ、水道の概況がつかめず、復旧に欠かせない民間の担い手に頼る術も失っている。脆弱となった地方の基礎体力が顕在化している。

 自然災害に予告はない。24時間365日、不断の危機管理意識が求められることは水道関係者の共通認識ではあるが、元日の発災というタイミングだけでなく、過疎と高齢化が進む自治体が受けた災害の甚大さと半島という地勢的特性ゆえに生じた支援の障壁が、われわれの想像を超える復旧の困難さに内在している。

 まずは〝命の水〟を届けること、そして一刻も早く再び能登地方に日常を取り戻していくため、水道関係者一丸での取組みが急務となる。

 所管省の移管という水道行政の大きな転換点を3カ月後に控える中、この難局を「上下水道界」がいかに乗り越えていくかが、これからの水道のあり方の道筋ともなる。

  ■支援は確かな情報から

 テレビ報道が伝えた輪島市の火災の映像は、防災における水の重要性を改めて浮き彫りにした。水がなければ火災の消火は不可能である。

 これまでの「大震災」と称された災害と同じく、いかなる時においても水道が機能し続けることが必要不可欠であることを如実に伝えている。

 新潟市など各地で地盤の液状化被害も確認された。給配水網に面的な漏水被害をもたらす液状化は、局所的な被害であっても、水運用全体に影響を及ぼしかねない。新潟市では、かつての経験を教訓にして、市民に被害状況と現状を発信しながら給水、復旧対応に努め、断水被害を最小限にとどめた。仙台市、さいたま市が地元の管工事業者とともにいち早く駆けつけ、復旧に当たったことは、これまでの災害時と同様に水道界の連携の賜であろう。管路を含む施設被害の検証はこれからとなるが、技術的な教訓は確実に積み上げていかなくてはならない。

 とりわけ今回の災害では交通網の寸断が大きな壁となっている。新潟県、富山県、石川県中南部への給水支援の輪が広がる一方で、能登半島への支援の必要性を多くの水道関係者が認識し、全国の水道事業体が支援に前のめりになっている雰囲気を感じた。

 一極に集まることが混乱につながるリスクもあるため、確かな交通路の確保、必要な給水車の台数を一定程度精査しながら支援体制を構築することは、言うまでもないことである。

 最優先しなければならないのは、確かな情報とコミュニケーションである。一般報道で被災地の水問題が取り上げられれば、解決の術への期待が水道界に向けられることは当然である。

 水道行政移管を控える中で、政府全体の水道への関心も高まり、一般の情報と、水道を生業とする者の認識のギャップも生じてしまうのだ。

 社会の期待に応える使命を水道関係者が共通に有している中で、期待と使命を見失ってはならない。

 能登北部地域の復旧が本格化していく段階で、水道界の情報を正確に表現した情報を発信し、的確なコミュニケーションを図るための工夫が今こそ重要となってくる。

  ■使命を空転させず

 第一に水道界が一丸となって〝命の水〟を届けよう。水がなければ、人の命も、町の鼓動も維持できない。

 復旧に向けた政府方針として「プッシュ型」が強調されている。

 能登北部地域の状況が不明な状態が続くこともあり、水道においてもプッシュ型支援の重要性が問われることは論をまたない。プッシュ型は、量・質の双方で問われる。質を高めて、水道人の使命を空転させることなく、水道は国民の生活資源であることを原点に、国難の中で水道界に寄せられる期待に一丸となって今こそ応えよう。


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